山口あき子
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保健医療サービス分野の傾向と対策の音声収録

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1.訪問看護

1)訪問看護とは

訪問看護とは医師が、訪問看護が必要と認めた在宅の要介護者を対象に生活支援と医療処置を行う。看護師、保健師、理学療法士等の専門職によって提供されるサービスである。

利用者が潜在能力を活用し、残存能力を維持しながら可能な限り自立した生活が行えるようにする。また、医療処置を行うだけなく、利用者の生活の援助を行い、健康の維持、増進、病気や障害の悪化を防ぎ、生活の質を高めるような予防的関わりも重要である。

2)訪問看護の内容

(1)病状の観察と情報収集
(2)療養上の世話(排泄援助、清潔保持、移動、食事援助、被服の交換)
(3)診療の補助
(4)精神的支援
(5)リハビリテーション
(6)家族支援
(7)療養指導
(8)在宅での看取りの支援

3)訪問看護と介護支援サービス

(1)訪問看護計画の実施
サービス提供を行う前に訪問看護計画を立てそれに則ってサービスを提供する
看護計画は、居宅サービス計画を基にして、アセスメントを行い、生活上、健康上の問題から、看護問題を査定し、看護方法を考え、計画を立てる。
その際、必ず、長期目標、短期目標を立てて目標達成を目指す

(2)訪問看護指示書
訪問看護は医師の指示によってサービスが提供されるため、訪問看護開始時には主治医が記載した訪問看護指示書が必要である。訪問看護指示書の有効期間は1か月~6か月である。
利用者の病状が悪化するなど、急性憎悪のときは、特別指示書が交付される。 特別指示書があるときは14日間に限り毎日訪問看護を提供することが出来る。 (気管カニューレを使用している状態、又は真皮を超える褥瘡の状態の患者は、 特別指示書を1月に2回(28日間)まで交付することが出来る) 特別指示書によるサービス提供は、介護保険ではなく、医療保険の扱いになる。

(3)医療保険による給付対象
①急性憎悪時の訪問看護
②末期の悪性腫瘍(末期がん)の患者への訪問看護
③神経難病などの患者への訪問看護
・多発性硬化症 ・重症筋無力症 ・スモン ・筋萎縮性側索硬化症(ALS)
・脊髄小脳変性症 ・ハンチントン病 ・進行性筋ジストロフィー症
・パーキンソン病関連疾患(パーキンソン病については、ステージ3以上など)
・プリオン病 ・後天性免疫不全症候群 ・頸髄損傷及び人工呼吸器装着等
④精神科訪問看護

4)人員基準

看護師等(保健師、看護師、准看護師、)を常勤換算で2.5人以上配置する。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士は実情に応じて配置する。

常勤の管理者(原則をして保健師、看護師)を配置し、管理・運営を行う。

5)介護報酬

(1)所要時間で4つに区分
(2)各加算
緊急時訪問看護加算・ターミナルケア加算・特別管理加算・看護・介護職員連携強化加算・同一建物に居住する利用者の減算・看護体制強化加算

※介護予防訪問看護は省略

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2.訪問リハビリテーション

1)訪問リハビリテーションとは

居宅要介護者等に対して、心身の機能回復を図るため、医師の指示のもと、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が実施する訪問サービスであり、日常生活の自立を助けるものである。
※基準の基本方針に「心身機能」「活動」「参加」などの生活機能の維持・向上を図るものでなければならないことを規定する(2015年より)

2)訪問リハビリテーションの内容

病状の把握、心理精神状態の把握、障害の評価をした上で、医師の指示に基づいて訪問リハビリテーション計画を作成し、維持期のリハビリテーションと指導を計画的に行う。要介護度別に、以下のものがある。
(1)予防的リハビリテーション(要支援者対象)
(2)自立支援型リハビリテーション(要介護1・2の者を対象)
(3)介護負担軽減型リハビリテーション(要介護3.4.5の者対象)

具体的な内容は、以下のとおりである。
(1)廃用症候群の予防と改善
(2)基本動作能力の維持・回復
(3)ADL・IADLの維持・回復
(4)対人・社会交流の維持と拡大
(5)介護負担の軽減
(6)訪問介護事業所への自立支援技術の指導
(7)福祉用具・住宅改修に関する助言

3)事業所・人員基準

事業所は、病院、診療所、介護老人保健施設であり、理学療法士、作業療法士、又は言語聴覚士を配置する。常勤・非常勤、人員配置基準は特にない。

4)介護報酬

(1)1回20分で算定
(2)各加算
リハビリテーションマネジメント加算・短期集中リハビリテーション実施加算
社会参加支援加算

※介護予防訪問リハビリテーションは省略

3.居宅療養管理指導

1)居宅療養管理指導とは

居宅高齢者が居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営めるように、病院・診療所の医師、歯科医師、または薬局の薬剤師等により、居宅を訪問して行われる療養上の管理及び指導である。
居宅高齢者が疾病の予防から治療まで、医学的な面での指導や助言を受けて、快適な生活を送る事が目的である。

2)居宅療養管理指導の内容

居宅療養管理指導とは、居宅要介護者等について、病院・診療所または薬局の、医師・歯科医師・薬剤師等により、行われる療養上の管理及び指導をいう。(医師:医学的管理指導、歯科医師:歯科医学的管理指導、薬剤師:薬学的管理と指導)

また、これら以外で居宅療養管理指導にあたるものとして、歯科衛生士が歯科医師の指示により、口腔内の清掃、有床義歯の清掃に関する指導(この場合、保健師、看護師、准看護師でも、可)、管理栄養士が、医師の指示により行う、栄養指導、指定訪問看護ステーションの看護職員による療養上の相談・支援等がある。

3)利用者の特性

(1)治療が難しい疾病をもつ人(糖尿病、心不全、慢性呼吸不全、がん、褥瘡等)
(2)病状が不安定で、悪化、再発、合併症を起こしやすい人
(3)リハビリテーションを必要とする人
(4)生命維持に必要な器具をつけている人
(5)入院、入所の判断を要する人
(6)疾病にかかり易い人
(7)歯や口腔内及び栄養に問題をもつ人
(8)心理的に不安定な人

4)人員基準

病院又は診療所では、医師、歯科医師、薬剤師、歯科衛生士、管理栄養士を配置する。薬局では、薬剤師を配置する。

※介護予防居宅療養管理指導は省略

4.通所リハビリテーション

1)通所リハビリテーションとは

通所リハビリテーションの目的は、身体機能の維持、回復と認知症症状の軽減と、落ち着きのある日常生活の回復、またADLとIADLの維持、回復、コミュニケーション能力、または社会関係能力の維持、回復である。
※基準の基本方針に「心身機能」「活動」「参加」などの生活機能の維持・向上を図るものでなければならない事を規定する(2015年より)

通所リハビリテーションは、病院、診療所、介護老人保健施設において行われる。

2) 通所リハビリテーションの内容

リハビリテーションと医療的ケアの機能を併せ持っている。個別リハビリテーション(個別機能の改善)、集団リハビリテーション(身体的活動性と社会関係能力の改善)、居宅生活への支援(居宅生活での介護方法、過ごし方、環境整備等の改善)を実施するため、通所リハビリテーション実施計画を作成し、医師の指示のもと、各職種がチームケアを行う。

3)人員基準

(1)医師の配置が必要。
(2)リハビリ関係:理学療法士等又は、看護師等を配置
(3)機能訓練指導員は、必要なし。
(4)介護職員、看護職員は、利用者数に応じて配置

4)介護報酬

(1)所要時間で区分
(2)各加算
リハビリテーションマネジメント加算・短期集中個別リハビリテーション加算・認知症短期集中リハビリテーション実施加算・生活行為向上リハビリテーション実施加算・重度療養管理加算

※介護予防通所リハビリテーションは省略

5.短期入所療養介護

1)短期入所療養介護とは

病院、診療所、介護老人保健施設、介護療養型医療施設に短期間入所して、看護、医学的管理下における介護及び機能訓練、その他必要な医療、日常生活上の世話を行うものである。

2)短期入所療養介護の内容

短期入所療養介護計画のもと、以下のことを行う
(1)介護者の負担軽減
(2)疾病に対する医学的管理
(3)装着された医療器具の調節・交換
(4)リハビリテーション
(5)認知症患者への対応
(6)急変時の対応
(7)ターミナルケア

3)特定短期入所療養介護

特定短期入所療養介護とは、日帰りのサービスであり、難病やがん末期の要介護者など、医療ニーズと介護ニーズの両方をもつ在宅の中重度者の生活の質の向上や家族負担軽減のサービスである。
また、退院退所直後やレベル低下時に集中的なリハビリテーションを提供できるサービスである。

4)介護報酬

(1)施設の種類別及び要介護状態別に算定
連続して30日以上の利用は全額自己負担

(2)各加算
重度療養管理加算・個別リハビリテーション実施加算・療養食加算・認知症行動・心理症状緊急対応加算・

※介護予防短期入所療養介護は省略

6.介護老人保健施設

1)介護老人保健施設とは

要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて、看護、医学的管理の下における介護、及び機能訓練その他必要な医療、並びに日常生活上の世話を行う。
また、これらのことを行うことで、入所者がもつ能力に応じて自立した日常生活が営めるようにするとともに、在宅生活への復帰を目指すものである。

設置根拠となる法律は、介護保険法であるので、都道府県知事に基づく開設許可を受けて、事業運営を行う。
介護老人保健施設の開設者の条件は、地方公共団体、医療法人、社会福祉法人、その他厚生労働大臣が定めた者である。

2)介護老人保健施設の内容

(1)医療と福祉のサービスを統合した包括的ケアサービス施設
(2)生活機能向上の集中的な、維持期リハビリテーション施設
(3)多職種のチームケアで、早期在宅を目指す在宅復帰施設
(4)家庭での生活が継続できるように支援する在宅生活支援施設
(5)家庭介護者や地域ボランティア等がケア技術を習得する地域に根ざした施設

3)人員基準

(1)医師の配置は必要。
(2)相談員=支援相談員の配置が必要。
(3)リハビリ関係:理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のいずれかを配置していることが必要。
(4)栄養士は、配置が必要。
(5)薬剤師は、配置が必要。
(6)介護支援専門員の配置が必要。

4)介護報酬

(1)要介護度別、施設の種類別に算定
(2)各加算
口腔機能維持管理体制加算・認知症ケア加算・認知症専門ケア加算・若年性認知症入所者受入加算・ターミナルケア加算・療養体制維持特別加算

7.介護療養型医療施設

1)介護療養型医療施設とは

要介護者で、入院医療を必要とする高齢者に対応した施設である。QOLの維持・向上を目的とした長期的なケアである長期療養ケアを行い、在宅復帰を目標にした取り組みと医療重視の長期療養者への対応を行う。

介護療養型医療施設の指定を受けられるのは、「療養病床を有する病院」、「療養病床を有する診療所」、「老人性認知症疾患療養病棟を有する病院」

平成30年3月で廃止する方針、平成24年度以降新たな指定は行われていない。

2)介護療養型医療施設の内容

(1)健康・予防への取り組み
(2)疾病に対する医学的管理
(3)施設サービス計画の策定
(4)リハビリテーション
(5)認知症患者への対応
(6)在宅支援
(7)急変時の対応
(8)ターミナルケア

3)人員基準

(1)医師の配置は必要
(2)相談員を配置する規定はなし(配置しなくてよい)
(3)看護職員は常勤換算で、患者6人又はその端数を増すごとに1人配置
(4)リハビリ関係:理学療法士、作業療法士、両方の配置が必要
(5)栄養士は、配置が必要。
(6)薬剤師は、配置が必要。
(7)介護支援専門員の配置が必要。

4)介護報酬

(1)要介護度別、施設の種類別に算定
(2)各加算
若年性認知症患者受け入れ加算・認知症専門ケア加算・認知症行動・心理症状緊急対応加算・退院前訪問指導加算・退院後訪問指導加算・退院時指導加算・退院時情報提供加算・退院前連携加算・老人訪問看護指示加算
栄養マネジメント加算・療養食加算・経口移行訓練加算・経口維持加算・口腔衛生管理加算

8.地域密着型サービス

1)定期巡回・随時対応型訪問介護看護

(1)定期巡回・随時対応型訪問介護看護とは
要介護状態となった利用者が、可能な限り居宅において、その能力に応じた自立した日常生活が送れるよう、定期的な巡回や随時に居宅を訪問し、入浴、排泄、食事等の介護、緊急時の対応その他、安心して居宅で生活が出来るように、援助、支援を行う。
定期巡回・随時対応型訪問介護看護には、以下の2つの類型がある。

①一つの事業所で訪問介護と訪問看護をサービスを行う「介護・看護一体型」
②訪問介護を行う事業者が地域の訪問看護事業所と連携してサービスを行う
「介護・看護連携型」

(2)定期巡回・随時対応型訪問介護看護の内容
定期巡回・随時対応型訪問介護看護計画を作成し、計画に基づき以下のサービスを行う。

・定期巡回サービス
(訪問介護員等が定期的に利用者の居宅を巡回して行う日常生活上の世話)

・随時対応サービス
(あらかじめ利用者の状況を把握し、随時利用者・家族から通報を受け、訪問介護員等の訪問や、看護師等(保健師、准看護師、理学療法士など)が対応する)

・随時訪問サービス
(随時訪問サービスにおける、訪問する、しないの判断に基づき、訪問介護員等が、利用者の居宅を訪問して行う日常生活の世話)

・訪問看護サービス
(看護師等が医師の指示に基づき、利用者の居宅を訪問して行う療養上の世話や診療の補助)

※なお、定期巡回・随時対応型訪問介護看護のサービスを提供する日時等については、居宅サービス計画に定められた日時にかかわらず、居宅サービス計画や利用者の状況・希望を踏まえて計画作成責任者が決定することができる。

(3)人員基準
・オペレーターは、看護師、介護福祉士、医師、保健師、准看護師、社会福祉士、介護支援専門員であること。
(オペレーターのうち1人以上は、看護師、介護福祉士等でなければならない。)
・定期巡回サービスを行う訪問介護員等は必要な数、随時訪問サービスを行う訪問介護員等は1人以上置く。
・訪問看護サービスを行う看護師等は、保健師、看護師、准看護師が常勤換算で2.5人以上置く。そのうち1人は常勤の保健師または看護師であること。理学療法士、作業療法士等は実情に応じた適当数を置く。
・計画作成責任者は、看護師、介護福祉士等のうち1人以上を配置する。
・専従かつ常勤の管理者を置く。(事務所の他の職務等との兼務は可能)

(4)介護報酬
要介護度別に1か月単位で算定
各加算
緊急時訪問看護加算・特別管理加算・ターミナルケア加算・退院時共同指導加算・総合マネジメント体制加算・通所利用減算・訪問看護体制減算・訪問看護減算・特別指示減算・認知症加算

2)看護小規模多機能型居宅介護(複合型サービスから名称変更)

(1)看護小規模多機能型居宅介護とは
訪問看護と小規模多機能型居宅介護とが組み合わされたサービスである。

(2)看護小規模多機能型居宅介護の内容
複合型サービス計画に基づき、利用者の病状、心身の状況等その他状況を踏まえて、通いサービス、訪問サービス、宿泊サービスを、ニーズに合わせて柔軟に組み合わせて、療養上の管理のもと、適切に行う。
定員25人から29人へ増員(2015年4月より)

(3)人員基準
・日中の通いサービスは、常勤換算で利用者3人に1人以上置く。(1人以上は保健師、看護師、准看護師)
・日中の訪問看護サービスは、常勤換算で利用者2人に1人以上置く。(1人以上は保健師、看護師、准看護師)
・夜勤職員については夜間及び深夜の時間帯を通じて1人以上置く。
・宿直職員は必要な数以上を置く。
(宿泊サービス利用者がいない場合、夜間等の時間帯を通じて、利用者に訪問サービスができる体制をとっていれば、夜勤職員、宿直職員は置かなくてよい)
・看護職員については、常勤換算で2.5人以上(うち1人は常勤の保健師、看護師)
・介護支援専門員の配置が必要である。
・専従かつ常勤の管理者を置く。(事務所の他の職務等との兼務は可能)
また、施設等で、3年以上認知症の者の介護に従事した経験者で、認知症対応型サービス事業管理者研修を修了している者、または保健師か看護師であることが必要である。

(4)介護報酬
要介護度別に1か月単位で算定
各加算
認知症加算・退院時共同指導加算・緊急時訪問看護加算・ターミナルケア加算・特別管理加算・総合マネジメント体制強化加算・訪問看護体制減算・医療訪問看護減算・特別指示減算

9.高齢者に起こり易い疾病および障害

1)脱水

脱水は、体内の水分が不足している状態であり、摂食障害、下痢、発熱、高血糖、利尿剤服用などが原因である。不感蒸泄や排泄により、水分が失われるため、1日1000ミリリットル以上の水分をとる必要がある。
脱水の予防には、暑い日はこまめに水分をとり、居室の気温の上昇に注意し、飲食量の低下や、下痢・発熱がある場合は、早めに医療機関を受診する等がある。

2)廃用症候群(生活不活発病)

廃用症候群は、日常生活での活動性の低下に伴って生じる身体的・精神的機能の全般的な低下のことをさす。症状の種類として、骨格筋の萎縮、関節の拘縮、尿路結石、起立性低血圧、静脈血栓症、褥瘡、尿失禁などがある。
廃用症候群の予防には、早期離床、リハビリテーション、適度な運動等を行う。

3)便秘

便秘は高齢者に最も多くみられる症状の一つである。高齢者に多いのは機能性便秘であり、少ないのは、器質性便秘である。
便秘の予防には、十分な水分と規則正しい食生活、繊維の多い食物、適度な運動が有効である。

4)低栄養

高齢者は、消化吸収機能の低下により、低栄養状態になりやすい。栄養が不足すると、浮腫・貧血や免疫性の低下を起こす。
低栄養の原因は、加齢による、咀嚼力・唾液分泌の低下や、嚥下障害や逆流性食道炎等の疾患、独居、食事準備困難等の環境などである。

5)感覚器障害

加齢に伴い、視力、聴覚、味覚が低下する。
難聴で高齢者に多いのは、感音性難聴、少ないのは、伝音性難聴である。

10.高齢者に多くみられる各種の疾患

1)脳血管障害

脳血管障害の主なものは以下のとおりである。
・動脈硬化性の血管障害による脳内出血
・動脈硬化性の血管障害による脳血栓
・心臓由来の血栓が脳で詰まる事による脳塞栓
・脳動脈瘤の破裂によっておこるくも膜下出血

(1)脳内出血
脳の動脈硬化に加え、高血圧によって、動脈が破綻し、出血がおこる。血腫が脳内にできることによる頭蓋内圧亢進症状と、出血した血管が支配していた領域や、血腫で圧迫された部分の脳の働きが障害される、局所症状がある。
運動麻痺、感覚障害、運動失調、言語・記憶・認知等高次脳機能障害などが出現する。
治療は、血腫除去手術、脳圧亢進に対する薬物治療を行う。

(2)脳血栓
アテローム血栓により、脳動脈の内腔が狭くなり、その支配領域に虚血性壊死を起こす。血管の詰まり方は、ゆっくりである。症状の完成は、数時間~1,2日である。安静時、や血圧低下時に生じやすく、朝目覚めるときに、気づきやすい。片麻痺や半側性の感覚障害などが出現する。治療は、血栓溶解療法を行う。

(1)(2)ともに、動脈硬化の危険因子として、高血圧、糖尿病、高脂血症、肥満がある。

(3)脳塞栓
心臓でできた血栓が、心房細動などにより壁からはがれ、脳に運ばれて梗塞を生じる。血管の詰まり方は、急である。数分以内に症状が完成。太い血管を閉塞した場合、出血を伴う出血性梗塞を生じ、脳の局所症状に加えて、脳圧亢進症状が出現。症状回復は困難である。
治療は、血栓溶解療法を行う。
※脳梗塞は、脳血栓、脳塞栓の総称である。

(4)くも膜下出血
脳動脈の壁が薄く、弱い部分に瘤を作り、それが破れて、脳の表面とくも膜の間に血液が拡がる。突発性の激しい頭痛、嘔気、嘔吐を伴う。患者の約半数が意識障害を伴う。脳の局所症状は目立たないが、動脈瘤の圧迫による脳神経症状として、眼瞼下垂や複視などが生じる。治療は、動脈瘤手術などが行われる。
※脳血栓、脳塞栓などは、再発しやすいので、血圧管理、血栓防止の薬物療法を行う。

2)パーキンソン病

(1)四大運動症状:振戦、固縮、無動、姿勢・歩行障害
(2)原因:不明(約5%が家族性)
(3)脳病変:黒質の神経細胞の変性、消失が起こる。
(4)治療:薬物療法(ドパミン神経伝達の改善)、治療薬はL-ドパ等、薬物の副作用として、不随意運動(ジスキネジア)、精神症状(幻覚・妄想)が起こる。内服を中止すると悪性症候群を起こす。
(5)対象疾患:特定疾患(難病)・特定疾病に指定されている。

※厚生労働省が定めた「特定疾患治療研究事業の対象疾患」の認定条件は、ヤールのステージ3以上、かつ生活機能症度Ⅱ、Ⅲ度の者である。

3)糖尿病

(1)糖尿病で高齢者に多いのは、2型糖尿病(インスリン非依存型)である。
(2)治療法は、食事療法、運動療法、薬物療法(経口血糖降下薬・インスリン注射)である。
(3)糖尿病の3大合併症は、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症である。(いずれも、特定疾病である。)

4)高血圧症

(1)二次性高血圧は、原因がわかっている。
(2)本態性高血圧は、原因がわかっていない。(本態性の言葉に惑わされない)高齢者に多いのは、本態性高血圧である。
(3)食生活では、減塩、蛋白質、カリウム、マグネシウムを多く摂る。
(4)肥満の改善、生活習慣の改善を図る。

5)閉塞性動脈硬化症(ASO)

動脈硬化を基礎に血管が狭窄、閉塞し、末梢に血液が送れなくなる病態。高齢者に多いのは下肢、少ないのは、上肢。歩行時の下肢痛(休むと痛みは軽減)が特徴。

6)消化性潰瘍

(1)胃潰瘍は、食後、満腹時に痛みがある。高齢者に多い。
(2)十二指腸潰瘍は、空腹時の痛みが特徴である。高齢者には少ない。

7)骨粗鬆症

カルシウム不足から骨密度が減少し、骨折しやすくなる。女性に多く、更年期以降に自覚症状が現れ、立ち上がりや重い物等での背中や腰の痛みから始まり、徐々に背中が曲がっていく。
予防として、食事(カルシウム摂取)、適度な運動、日光浴が重要である。治療として、薬物療法がある。

8)肺炎

ウイルスや細菌による肺の感染症である。肺炎には、市中肺炎、院内肺炎があるが、この他に高齢者に多いものとして、誤嚥性肺炎がある。
誤嚥性肺炎は、初期症状として、食欲低下、全身倦怠感、呼吸数増加等があり、38℃以上の高熱が出ない事がある。せん妄や傾眠傾向などの精神症状がみられる場合もある。

11.バイタルサインと検査

1)体温

(1)高体温は37℃以上、低体温は、34℃以下をいう。
(2)高体温の場合は感染症、脳血管障害での中枢性発熱、脱水等を疑い、低体温では、栄養失調や甲状腺機能低下を疑う
(3)検温法には、腋下検温法、口腔検温法、直腸検温法がある。

2)血圧

高血圧の定義:最高血圧(収縮期血圧)140以上、最低血圧(拡張期血圧)90以上

3)脈拍

脈拍の正常値:60~80、60未満は徐脈、100以上は頻脈、リズムが乱れているものは不整脈である。

4)呼吸

呼吸の正常値:安静時の呼吸数、15~20回(1分間)
浅い呼吸と深い呼吸を繰り返す場合は、脳血管障害の疑いがある。

12.検査値とその意義

1)加齢による変動がない検査値

クロール(Cl)、血小板、空腹時血糖、GOT。

2)クロール(Cl)

電解質の1つで、電解質は、クロールの他に、ナトリウム、カリウムがあり、ナトリウム、カリウムは、加齢に伴い上昇する。
電解質とは、生体の恒常性を維持している物質で、高齢者でも、通常は、異常は見られない。
電解質に異常をきたす場合は、主に脱水や、熱中症になったときである。

3)赤血球

血液中の物質で、加齢に伴い、減少する。これにより、生理的貧血がおこる(老人性貧血)。貧血の場合は、慢性感染症、消化管出血、慢性腎疾患等の貧血にも注意する。

4)血小板

血液中の物質で、血液凝固、止血の働きをする。その他、血液は、赤血球(主成分はヘモグロビンで、酸素と結合し、これを運搬する。)と白血球(免疫機能に関与)がある。

5)空腹時血糖

血糖値を測定する検査で、糖尿病の指標となる。血糖値を測定する検査は、この他に、経口糖負荷試験(OGTT)、ヘモグロビンA1c(HbA1c)がある。この中のヘモグロビンA1cは、食事の摂取に左右されない検査値で、1~2ヶ月前の血糖の状態を知る指標となる。

6)GOT

肝機能の状態を示す検査値であり、慢性肝炎、肝硬変、肝がん等の肝胆道疾患や、心筋梗塞などの疾患により上昇する。

7)CRP

炎症の有無を調べるもので、悪性腫瘍や感染症などで増加する。

8)総蛋白

アルブミンとグロブリンからなる。アルブミンは、高齢者の栄養評価に最もよい指標である。(通常、3.5g/dl以下で低栄養を疑う。)

9)尿素窒素(BUN)・クレアチニン(Cr)

BUNは、腎機能の低下、脱水症、消化管出血で上昇する。Crは、腎機能低下で上昇する。

13.介護技術の展開

1)排泄ケア

(1)排泄の介護
・排泄障害の予防、早期発見
・排泄障害の増悪、拡大防止
・排泄障害の改善、自立
・二次的障害の防止(尿路感染症、褥瘡等)
・排泄障害による生活上の影響の除去(活動性の低下、夜間頻尿による安眠の妨害等)

(2)尿失禁の種類
・腹圧性尿失禁(経産婦に多く、咳等で腹に力が加わると漏れるが、気をつければ正常の排尿ができる)
・溢流性尿失禁(前立腺肥大症などにより、ダラダラと連続的に尿が漏れる状態)
・機能性尿失禁(排尿機能そのものに器質的障害はないのに、身体障害や認知症などにより、排泄動作が適切にできないことから起こる)
・切迫性尿失禁(突然我慢できないほどの強い尿意を催して起こる)
・反射性尿失禁(脊髄損傷などにより起こる)

2)褥瘡への対応

(1)褥瘡の発生要因
体重による圧迫持続によるもの。尿、便、汗等の、皮膚の不潔や湿潤、皮膚の摩擦、栄養不良があると、褥瘡の発生を促進させる。

(2)予防対策
・体位変換を頻繁に行う。不潔や湿潤など、褥瘡を発生させる要因を、介護によって取り除く。具体的方法は、寝ている場合、原則として2時間毎に体位変換する。除圧効果のある予防用具(エアーマット等)を使用する。
・スキンケア…入浴や清拭を行う。圧迫を受けやすい部位のマッサージ(発赤部分は避ける)。
・寝衣・寝具…常に清潔で乾燥した状態を保つ。布団は、軽いものを選び、寝衣やシーツにしわを作らない、又は、のりをつけすぎない。
・排泄…おむつを汚れたまま、放置しない。通気性のよい材質のおむつカバーや失禁用シーツを使用する。便器をあてるときは皮膚をこすらない。
・栄養…高蛋白、高カロリー、高ビタミンの栄養補給に努める。
・予防用具…予防用具を適切に活用する。

(3)褥瘡の対処法
発赤のときは清潔にして、皮膚がむけた時は、医師・看護師等にみてもらう。褥瘡になってしまったら、褥瘡部が感染しないように、患部を保護、清潔に保つ。

3)口腔ケア

(1)口腔ケアの重要性
口腔の4つの大きな機能として、咀嚼・嚥下・発音・呼吸、がある。
歯科医療は、食物摂取系の一部である「歯」のみだけでなく、障害となった食物摂取機能の回復が目的である。
口腔ケアは機能回復、健康の保持・増進、生活の質を高め、誤嚥性肺炎を予防する効果を持つ。

(2)口腔のアセスメント
加齢に伴い口腔に変化が起こる。口腔粘膜の萎縮、歯槽骨の吸収、唾液分泌機能の低下、咀嚼筋の低下や、歯と歯の隙間の拡大、歯の根の露出等で、むし歯や歯周疾患による歯の喪失が起こる。歯磨きや義歯の取り扱いの自立度の評価をする。

(3)口腔ケアの方法
・機械的清掃法(効果が高い)
歯ブラシによるブラッシング、糸ようじなどのフロッシング等がある。
・化学的清掃法
消毒・殺菌作用のある(ない)洗口剤・含そう剤を使用する。

(4)義歯の基礎知識
義歯の放置は、バクテリアが繁殖し、不潔になり、口臭の原因になる。毎日のケアが大切である。
義歯は、ブリッジ、局部床義歯、総義歯がある。

14.ケアにおけるリハビリテーション

1)リハビリテーションとは

障害を持った人々が、地域において持てる能力を最大限に発揮し、人権が尊重され、生きがいを持った生活を送れるように、障害者やその家族を中心に共通の目標に向かってチームで援助する活動。

リハビリテーションの流れ

(1)予防的リハビリテーション(健康増進法・老人保険事業や介護予防事業)
虚弱高齢者や要支援1.2の者は、膝痛・腰痛、転倒・骨折、加齢による衰弱などにより心身機能低下が進み、要介護となるリスクが高い。
手術等の身体に負担となる治療を受けた場合の長期臥床は要介護に陥るきっかけとなるため、不活発な生活に伴う「不動の悪循環」を予防する。

(2)治療的リハビリテーション(医療保険)
①急性期リハビリテーション
発症直後から急性期治療と並行して、ベッド上での体位保持、定期的な体位変換、他動的関節可動域訓練を行い、関節の拘縮や褥瘡などの予防に努める。
②回復期リハビリテーション
他職種リハビリテーションチームにより行われる集中的かつ包括的なリハビリテーションで、最大限の機能回復、ADLの向上や早期社会復帰を目指す。

(3)維持的リハビリテーション(介護保険)
機能の維持、体力増進、社会参加の促進、介護家族の支援

2)リスク管理

リハビリテーションを行う際には、危険性のチェック(疾病や障害の確認、バイタルチェック、その他疲労感、転倒の可能性等)を行い、事故防止に努める。

3)ケアにおいて問題となる障害や症状

廃用症候群
安静臥床が長引くために生じる拘縮、筋力低下、意欲の減退など心身に起きる  様々な負の変化
①拘縮
関節周囲の皮膚、筋肉、関節包や靭帯の変化により関節可動域が制限された状態。適切な体位の保持、装具などによる良肢位の保持及び最低一日に一階、関節を動かす事
②筋力低下
1週間の長期臥床で20%の筋力低下
自分で出来ることは自分で行う、趣味活動などに積極的に参加するなど活動的な生活を送ることが予防になる。
③褥瘡
局所の持続的圧迫によって生じる皮膚潰瘍で、敗血症や低栄養状態を引き起こすこともあるので注意が必要。
④心肺機能の廃用
脈が速くなる、少し動くと息が切れる、疲れやすい、起立性低血圧を起こしやすい。
⑤骨粗鬆症
長期の安静臥床により骨に対する刺激が減ると骨量が減少し痛みや骨折を起こしやすくなる。

4)生活の中でのリハビリテーション

(1)機能レベルに合わせた適切なリハビリテーションを工夫する
(2)動きやすい環境を整備し、毎日の生活の中で動くことを習慣化する
(3)目標を持ち、達成感を実感できるように、成果を日誌やカレンダーなどに記録 (4)欲張らず、毎日手軽にできるような種目に絞る
(5)天候に影響されずに運動量が維持できるように工夫する
(6)定期的に機能状態、活動レベルを評価し、プログラムを見直す

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準

障害高齢者の日常生活自立度(寝たきり度)判定基準

15.認知症高齢者の介護

1)認知症の理解

(1)認知症とは
意識は保たれているが、脳に病変を生じたために、認知機能が持続的に低下し、生活(管理)に困難をきたした状態。さらに、独居生活を営むには手助けが必要なレベルにまで認知機能が低下した状態をいう。
●認知症を引き起こす主な原因疾患
【変性疾患】特定のたんぱく質が脳に多量に蓄積する進行性。
アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症
【脳血管症障害】脳梗塞や脳血流低下などが原因

(2)認知症の診断・評価
認知症の診断は、CTスキャン、MRI等を用いて行う。
認知症の評価は、長谷川式認知症スケール、MMSEを用いて行う。

(3)アルツハイマー病
アルツハイマー型認知症発症の20~30年前から始まり、脳にβたんぱくとタウたんぱくの異常蓄積を引き起こす。
症状は軽い物忘れから始まり、エピソード記憶、近時記憶の障害が著しくなる。
進行とともに注意障害や実行機能障害、失行などが加わり、身体機能の低下から歩行困難、言語機能や聴覚機能の低下、最期は嚥下困難となり死を迎える。

治療はドネぺジル・ガランタミンなどのアセチルコリンを増やす薬剤が保険適応

(4)血管性認知症
脳梗塞や脳出血などによる大脳白質病変が原因、徐々に進行する。
症状は、病変が起こる部位で異なるが、認知スピードの低下や反応の鈍さ、意欲低下やうつ状態、また運動障害や構音障害、嚥下障害の症状も見られる。

(5)レビー小体型認知症
αシヌクレインというたんぱくが脳や末梢神経など広範囲で異常沈着。
認知障害だけでなく、パーキンソン症状などの運動障害、自律神経症状、うつやリア
ルな幻視などの特徴がある。
パーキンソン病治療薬のアリセプトが保険適応

(6)認知症状とBPSD
認知症の症状は、認知症状(中核症状)とBPSD(行動・心理症状)に分けられる。
●認知症状は脳がダメージを受けたことに直接起因、記憶障害や見当識障害、実行機能障害、失行や失認など
●BPSD(行動・心理症状)は、暴言・暴力などの攻撃性、叫び声、不穏や焦燥、徘徊といった行動症状と不安や抑うつ、幻覚、誤認・妄想といった心理症状がある。
●BPSDは環境整備や適切な医療・ケアで良くなる可能性が高い。

2)認知症高齢者への支援
(1)パーソン・センタード・ケア
その人らしさ、一人の人間として大切にするという考え方でのケアを提唱。 5つのアプローチ方法や「認知症ケアマッピング」という分析ツールを用いる
(2)ユマニチュード
人間らしさを尊重するという理念のもとに生まれたケア技法
(3)バリデーション
認知症の人の「考えや感情を確認し、共感し、力づける」という視点でBPSDなどの症状を緩和を目指すコミュニケーション技法

3)地域で支えるケア
(1)地域包括ケアにおける他職種共同支援、地域包括支援センターの役割、医療との連携、BPSDの予防
(2)新オレンジプラン(2015年1月)
●認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域の良い環境で自分らしく暮らし続けることが出来る社会の実現を目指す
●「認知症ケアパス」と「地域資源マップ」の作成・普及
●かかりつけ医認知症対応力向上研修と認知症サポート医
●認知症初期集中支援チーム
●若年性認知症施策の強化

16.精神に障害のある場合の介護

高齢者の精神障害は、大きく分けて、器質性精神障害と機能性精神障害がある。

・器質性精神障害
せん妄、アルツハイマー病、血管性認知症、初老期認知症(ピック病)
・機能性精神障害
老年期幻覚妄想状態、老年期気分障害(老年期躁うつ病)、老年期神経症、老年期パーソナリティ障害

1)せん妄

意識障害の一種で、軽度の意識混濁に錯覚、幻覚、精神運動興奮、運動不穏が加わった症状をいう。比較的急速に発症し、意識の混濁、注意力がない、強い不安感や恐怖感を抱く、自分が何処にいるかわからない、意味不明な言動がある。

せん妄は夜間にみられる事が多い。(夜間せん妄)この状態は、通常2~3日から1週間程度で改善する。予後は悪くないが、長期間持続する事もある。

高齢者の場合、脳の器質疾患(脳血管障害、認知症疾患、脳腫瘍、頭部外傷等)の際に多く発症する。その他の誘発要因として、心疾患、呼吸器疾患、腎疾患、感染症、骨折、手術、脱水、栄養失調、薬物等がある。

治療は、せん妄の基礎の原因を治療する。同時に、電解質の補給、脳循環改善薬、少量の向精神薬を用いる。

2)老年期気分障害(老年期躁うつ病)

気分障害とは、気分と意欲が障害される精神障害で、気分の高揚した躁病(そう状態)とうつ気分のうつ病(うつ状態)を示す疾患である。多くは、老年期うつ病。老年期うつ病は特に、初老期(50~64歳)に好発し、老年人口の3~5%の有病率である。高齢者の自殺の主要な原因の1つ。

気分、意欲、思考全体に、落ち込んだ気持ちになり、身体症状として、睡眠障害や、食欲不振、頭痛等が、よく起こる。

以下のような特徴がある。
(1)不安、焦燥感を示しやすい
(2)心気的傾向を示しやすい
(3)妄想を示しやすい
(4)認知症様状態を示しやすい

原因として、心理的、身体的要因が発症の契機になる。(配偶者、親族、友人の死、家庭内トラブル、社会的地位の喪失、引っ越し、生活環境の変化、身体疾患等がある。)執着気質の性格に多い。

治療は、できるだけ早く医療機関を受診し、抗うつ薬を投与する。抗うつ薬は、眠気、ふらつき、口渇、便秘、尿閉等の副作用があるので、注意する。

3)老年期神経症

女性に多く、特有な性格をもとに環境の変化や心理的ショックから起こる、精神および身体の機能障害である。

抑うつ神経症、不安神経症、心気症の3つのパターンがあり、混合した症状も多々ある。

(1)抑うつ神経症
喪失体験を契機に発現しやすく、悲壮感に加え、不安、焦燥(イライラ)、孤独感等を訴える。
(2)不安神経症
心悸亢進、発汗、息苦しさを伴う不安発作(パニック障害)を示すものや、全般性不安障害(漠然とした不安と心配が持続する)がある。
(3)心気症
身体の健康を過度に心配し、くどくどと訴え、悪い方へ、悪い方へと症状を解釈する。

治療は、精神療法が中心で、支持的療法(受容的態度で訴えを聞き、心の支えになり、励まし、助言等)を行う。不安、心気には抗不安薬、うつ気分には、抗うつ薬を用いる。

17.栄養・食生活からの支援・介護

1)高齢者にとって「口から食べること」とは

①楽しみ、生きがいと社会参加の支援
②QOLの改善と「食べること」につながる生理活動
③低栄養状態の予防

2)身体状況・栄養状態の課題と食事

(1)高齢になると口渇中枢神経の機能低下、味覚の変化や咀嚼能力の低下、消化・吸収機能の低下、筋組織の減少など様々な身体変化がみられる。

(2)低栄養状態(PEM=Protein energy malnutrition)とは、たんぱく質及び糖質、脂質などによって供給されるエネルギーが不足した状態をいう。
※施設入所高齢者ではPEM中高リスク4割程度、在宅高齢者では3割程度

(3)PEMの評価・判定はBMI、体重の減少、血清アルブミン値等で行う

3)PEMとフレイルティサイクル

高齢者の低栄養状態はフレイル(虚弱=健康障害に陥りやすい状態)において、サルペコニア(加齢に伴う筋力の減少、または老化に伴う筋肉量の減少)に繋がり、活動の意欲や身体機能の低下を誘導する。その結果、活動度、消費エネルギー・食欲が低下しさらに低栄養状態が悪化するという悪循環をフレイルティサイクルという。

4)食事摂取基準と食事バランスガイド

日本人の食事摂取基準(2015年版)によると、
たんぱく質の補給推奨量 1.06g/kg/体重/日
エネルギー必要量 男性2193(kcal/日)、女性1742(kcal/日)

食事バランスガイドは、食事の望ましい組み合わせとおおよその量をイラストで分かりやすく示したもので、毎日の食事を「主食」「副菜」「主催」「牛乳・乳製品」「果物」の5つに区分している。

5)「口から食べる楽しみの充実」を支援する栄養ケア・マネジメント

施設に入所している中重度者の経口維持や経口移行など他職種による効果的な栄養・食支援の取り組みを充実させることが今後の課題

18.在宅での医療管理

1)在宅自己注射

薬剤を患者又は家族が教育・指導を受けて注射を行う。インスリン製剤を使用している場合は、食事摂取量の低下による低血糖、血糖コントロール不良による高血糖に注意する。

2)悪性腫瘍疼痛管理

末期の悪性腫瘍の患者で、持続性の疼痛があり、経口投与ではコントロールできない場合に、注射による鎮痛剤投与を行う。在宅ホスピスを進める上で重要な位置を占める。

3)在宅自己腹膜かん流法(CAPD)

在宅での管理が可能な人工透析である。水分バランスや体重・炎症の可能性等の定期的観察、腹膜炎や内分泌代謝異常等に注意する。

4)在宅酸素療法(HOT)

高度慢性呼吸不全、チアノーゼ型先天性心疾患・肺高血圧症を患い、在宅で酸素投与が必要な患者に行う。(基礎疾患は肺気腫が多い)酸素用高圧ガスボンベ等を使用するため、火気を近づけない注意が必要である。

5)在宅中心静脈栄養療法

悪性腫瘍や全身状態が悪化し、経口あるいは経腸摂取が出来ない場合、水分・電解質・糖質・蛋白質や脂質・ビタミンを含む高カロリー輸液を輸液する。カテーテルを用いた対外式とポート型の完全埋め込み式がある。

6)在宅成分栄養経管栄養療法

経口摂取ができない場合に、「経鼻」、「経腸」、「胃ろう」、「食道ろう」から栄養食を注入する方法である。栄養食の注入時は、栄養食を人肌にし、半座位にする、注入速度、胃内チューブの挿入の確認等に注意する。

7)在宅人工呼吸療法

長期にわたり持続的に人工呼吸器に依存、かつ安定した病状にある患者に行う人工呼吸療法で、人工呼吸器(レスピレーター)、気道内分泌物吸引装置が必要となる。二次感染の予防や分泌物によるカニューレの閉塞・窒息防止に注意し、ケアを行う。

8)ネブライザー

ネブライザーを用いて薬物を投与することで、気道のれん縮を改善し、痰の排出を促す。

9)在宅自己導尿・留置カテーテル

自然排尿が困難な患者に行う排尿法で、人工膀胱、膀胱留置カテーテル・自己導尿等がある。いずれも無菌操作で行う。カテーテルを留置する場合、感染症のリスクが高まる。

19.感染症の予防

1)尿路感染症

尿路感染症は、高齢者の感染の中で、最も多く見られる。主な症状として、頻尿、排尿時痛、尿混濁、発熱、尿閉等があり、重症になると、腎不全、敗血症、ショック状態になる。尿路感染症の場合、行われる検査は、血液検査(白血球数やCRP)、尿検査、腹部エコー、腹部CTがある。

2)褥瘡感染症

褥瘡ができ、幹部が壊死の状態になっていると、その部分から感染して、敗血症になることもある。感染症になった場合は、抗生剤の全身投与、患部を切開して、膿を取り除く。褥瘡感染症の予防は、褥瘡を早期に改善することである。

3)肝炎ウイルス

B型肝炎・C型肝炎は、長年の経緯を経て、肝炎、肝硬変、肝がんをきたす場合があり、原則として、血液を介して感染する。患者の抗原が陽性の場合、家族や介護者に感染の可能性がある。

4)疥癬

疥癬は、発疹が散発し、痒みが強いのが特徴。ヒゼンダニによっておこる皮膚感染症である。指間、腹部、大腿内部、陰部などの皮膚のやわらかい部分にできやすく、施設等で拡がると治療が困難なため、予防衣の着用や手洗いを徹底する等の予防が重要。

5)MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)

MRSAは多くの抗生物質を使用する中で出現した抗生物質耐性菌(メチシリン耐性)の1つで、感染を繰り返し、抗生物質による治療を受けている患者が保菌者である場合がある。

MRSA感染症は、血管内・尿路にカテーテルを留置している患者、気管内挿管をしている患者、褥瘡等の皮膚欠損がある患者、手術後の患者等に起こり易い。

感染予防には、以下が重要である。
(1)感染源の除去
(2)感染経路の遮断
(3)抵抗力の強化

感染経路は、介護者の手が介在する事が多く、施設内では特に、手洗い、うがい、マスク着用等の対策をとる。

感染予防対策として、病院内では、MRSAに感染した患者は個室に隔離する。(介護施設・在宅では、手洗いを励行すれば、隔離の必要はない)保菌者は、隔離の必要はない。

治療には、バイコマイシン、ST合剤、ミノサイクリン、ホスホマイシン、ゲンタマイシン、リファンピシン等の薬剤中で数種類の併用が行われる。MRSA鼻腔内保菌者に、ムピロシン軟膏を使用する。

20.急変時の対応

1)病気に起因する急変

(1)意識障害
何らかの原因により脳の血流が悪くなり、脳細胞に酸素やブドウ糖が送り込まれなくなって脳細胞の働きが低下したために起こる。基礎疾患が原因となる以外に、脱水、高温浴、熱中症、長時間の財投による脳虚血などでも起こる。
意識レベルの把握にJCS(3-3-9度方式)を使用する。

(2)呼吸困難
呼吸困難をきたす疾患は、呼吸器疾患(誤嚥、気管支喘息、肺炎、肺塞栓症)、心疾患(心不全、心筋梗塞)、脳神経疾患(脳血管障害、農園、重症筋無力症)、貧血、発熱、甲状腺機能亢進症、過換気症候群、アナフィラキシーショックなどがある。
※緊急性が高い、気道の確保や人工呼吸の必要性

(3)痛み
突然の頭痛はくも膜下出血や脳出血、徐々に頭痛が強くなる場合は外傷性頭蓋内出血、髄膜炎、脳炎、脳腫瘍など
胸痛を起こす代表的な疾患に狭心症、心筋梗塞、解離性大動脈瘤、肺塞栓など
背部痛は打撲や椎間板ヘルニアなどによる背中そのものに痛みがある場合と、放散痛といわれる離れたところ(心筋梗塞や狭心症)からの痛みがある。

(4)吐血、下血、喀血
バイタルサインに注意が必要。
喀血とは、気道系からの出血が経気道的口腔から喀出されること。

(5)その他
嘔吐、麻痺、発熱、脱水、窒息や誤嚥、転倒・骨折、入浴中の事故など

2)心肺蘇生のABC

心停止の状態が30秒から60秒続くと、瞳孔は散大し、3分以上停止すると、脳は不可逆的な障害を受けることになるので、診断の確定よりも緊急の処置などを優先させる。心停止と分かったら、胸骨の中央部を一撃し、心肺蘇生のABC(A:気道確保、B:人工呼吸、C:体外心マッサージ)を行う。
※AED(自動体外式除細動器)の使用

21.健康増進・疾病障害の予防

1)21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21・第2次)の策定

《2013(平成25)~2022(平成34)年度》
(1)健康寿命の延伸と健康格差の縮小
(2)生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底
(3)社会生活を営むために必要な機能の維持・向上
(4)社会環境の整備
(5)栄養・食生活、運動、休養、飲酒、喫煙及び歯・口腔の健康に関する生活習慣及び社会環境の改善

2)疾病予防

●一次予防(健康増進・疾病予防・特殊予防)
生活習慣・生活環境の改善、健康教育による健康増進を図り、予防接種による疾病の発生予防、事故防止による障害の発生予防すること

●二次予防(早期発見・早期対処・適切な医療と合併症対策)
発生した疾病や障害を検診などにより早期に発見し、早期に治療や保健指導などの対策を行い、疾病や障害の重症化を予防すること

●三次予防(リハビリテーション)
治療の過程において保健指導やリハビリテーション等による機能回復を図るなど、社会復帰を支援し、再発を予防すること。

3)生活習慣病

食習慣、運動、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣がその発症・振興に関与する疾患群

(1)がん【死因第1位】
ガン検診制度の充実により早期発見・早期治療が可能になり『治る病気』として認識されつつある。

(2)循環器疾患
脳血管疾患や心疾患、脳卒中などによる高次機能障害
食生活や喫煙・飲酒の見直し、適度な運動を心がける

(3)糖尿病
食事摂取量の適正化と適度な運動、発症した場合は禁煙を心がける
合併症(網膜症・神経症・腎症)に注意

(4)骨粗鬆症
カルシウムとビタミンDの摂取
転倒予防
適度な運動

22.ターミナルケア

1)ターミナルケアとは

終末期(ターミナル期)とは、死が間近に迫った時期を指し、この時期に提供されるケアをターミナルケアという。
終末期を過ごす住まいを「終の棲家」と呼ぶが、認知症グループホームやサービス付き高齢者住宅、有料老人ホーム、介護保険施設なども想定している。

食事・排泄・睡眠・移動・清潔・喜びといった6つの生活を支える視点の重要性

2)死に至るまでの一般的な経過

(1)がん
重要臓器への転移により最期を迎えることが多い。
死亡前1ヶ月以降に急速に身体機能が低下する。

(2)内臓疾患(心不全、呼吸不全、腎不全、肝硬変など)
慢性疾患の急性憎悪、合併症の併発の併発を繰り返しながら徐々に身体機能が悪化。

(3)認知症、脳血管障害、老衰
身体の機能が低下しても内蔵の機能が保たれた期間が長い。
肺炎などの合併症により死亡。

3)尊厳の重視と意思決定の支援

(1)リビングウィルの確認
意識が清明で認知機能が正常な時点で、どのような医療や介護を望むか確認しておく。
人生や生命観、健康観といったその人らしい暮らしや生き方から把握する

(2)コンセンサス・ベースド・アプローチ
本人の意思が確認できない場合(重度の認知症や意識障害)は、家族や医療関係者、介護専門職などが集まって話し合い、関係者の総意に基づいて方針をまとめる。

4)臨死前の兆候とケア

(1)亡くなる数週間前から一週間
食事摂取量がかなり減少し錠剤の服用が困難。一日中ウトウトしている時間が多くなる。徐々に血圧が低下、脈拍は早くなる。

(2)数日前
経口摂取は困難、意識が混濁し意味不明な言動や混乱が見られる。
脱水傾向、尿量の減少

(3)48時間前から死亡直前
経口摂取は不可能。昏睡状態でチェーンストークス呼吸や下顎呼吸へ変わる。
手足は冷たくなり脈が触れない。

(4)臨死期の心構え
家族や介護職の不安に対しての配慮
急変時の対応について連絡体制や対処方法など家族・関係職で統一を図る

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山口あき子
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