山口あき子
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【福祉サービス分野】傾向と対策
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福祉サービス分野の傾向と対策の音声収録

こちらのテキストはプロの声優が収録した音声を視聴いただけます。(25:50あたりから福祉サービス分野になります)

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1.訪問介護

1)訪問介護とは

訪問介護は、要介護者がその居宅において、その持っている能力に応じて、自立した生活を営むことができるように、入浴、排泄、食事などの介護、調理をはじめ家事など生活全般にわたる援助を行うものであり、家で住み続けたいと願う高齢者のニーズに応えるものである。訪問介護の目的は利用者が望むその人らしい生活の実現に向けた援助でありQOL(生活の質)を高め、自己実現を図るものである。

2)訪問介護の内容

(1)身体介護
食事、排泄、着脱、入浴、移乗、移動や通院、外出介助がある
(自立支援に向けてのともに行う家事、特段の専門的配慮をもって行う調理も身体介護に含まれる)
※20分未満の身体介護について、夜間等に関わらず要介護1・2の認知症または要介護3-5の利用者が利用できる。
(2)生活援助
調理、掃除、洗濯、買い物など(単身あるいは同居の家族が居ても障害、疾病、それと同様の状態で家事を行うことが困難な場合、サービスの利用ができる)
(3)介護職は医療行為はできないが、医療行為にあたらないものが明確化されている
※医療行為にあたらないもの
①体温測定 ②血圧測定 ③入院治療が必要ない者に対するパルスオキシメーター装着 ④軽微な切り傷、擦り傷、やけどなど専門的判断や技術を必要としない処置 ⑤一定条件下の医薬品の使用介助(軟膏の塗布、湿布の貼付、点眼薬の点眼、一包化された内服薬の内服、座薬の挿入など)

3)人員基準

配置人数は常勤換算で2.5人以上。このうち、常勤の介護職員等のうち、利用者の数が40又はその端数を増すごとに1人以上の者を、サービス提供責任者として配置しなければならない。また、訪問介護事業者は、事業所ごとに常勤の管理者を配置しなければならない。(一定の要件を満たしていれば50人に1人)

4)サービス提供責任者の役割

サービス提供責任者は、以下のような業務を行う。
(1)訪問介護計画の作成(居宅サービスの内容に即して、訪問介護の目標、具体的内容を記載)と変更
(2)計画の利用者、家族への説明
(3)利用申込みの調整
(4)利用者の状態の定期的な把握
(5)サービス担当者会議の出席などの連携
(6)訪問介護員への援助目標、内容の指示、利用者状況の伝達
(7)訪問介護員の実施状況の把握
(8)訪問介護員の業務管理
(9)訪問介護員への研修、技術指導
(10)サービス内容の管理

※介護職員等による痰の吸引等の制度
2012年4月より、「社会福祉士及び介護福祉士法」の一部改正により、介護福祉士及び一定の研修を受けた介護職員等においては、痰の吸引や経管栄養の医療行為が、医師の指示や看護職との連携のもとで可能となった。

5)介護予防訪問介護

要支援者に対して介護予防の効果が上がるように訪問介護サービスを提供する。
サービス提供は、生活援助が中心となるが、利用者がサービスに依存せず、利用者のできる行為を増やしていき、要介護状態にならないことを目的とする。
※介護予防訪問介護は予防給付の対象外となり介護予防・日常生活支援総合事業の一つである介護予防・生活支援サービス事業へ移行(2015(平成27)年から2017(平成29)年までに)

6)介護報酬

時間・内容別に算定
各加算
緊急時訪問介護加算・生活機能向上加算・特定事業所加算
集合住宅減算・初任者研修修了者であるサービス提供責任者の配置減算

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2.訪問入浴介護

1)訪問入浴介護とは

居宅を訪問し、以下の目的のもとに浴槽を提供して入浴を介助するものである。
(1)生活基盤の1つである入浴の機会を保障する
(2)入浴により身体を清潔に保持するとともに、精神の安寧を保つ
(3)入浴により疾病を予防する効果をもたらし、生活機能を維持・向上させる
また訪問入浴介護には、看護職員1名と介護職員2名で行なう全身浴、介護職員3名で行なう全身浴、清拭または部分浴がある。全身浴を行なう場合は、利用者の身体状況から入浴に支障がないか主治医の意見を確認したうえで行う
※介護予防訪問入浴介護においては、看護職員に代わって介護職員を充てることが可能

2)訪問入浴介護の内容

(1)訪問入浴介護サービス提供のための事前訪問
健康状態や主治医の指示の確認、浴槽の運搬方法などの検討確認、利用者家族の意見の確認など)
(2)訪問入浴介護にかかる計画の作成と、サービス実施ごとに入浴記録簿に結果を記録する
(3)利用者の体調の変化(発熱や血圧上昇)などがある場合、主治医に連絡し部分浴または清拭に変更する。利用者の状況によっては入浴を中止する
(4)医療処置を受けている利用者の入浴は主治医から注意事項の説明を十分うける。入浴後医療処置が必要な場合、往診や訪問看護の実施を調整しておく。

3)人員(その他)基準

(1)配置は、看護師、准看護師1名以上、介護職員2名以上であり、そのうち1名は常勤職員であること。(介護予防訪問入浴介護の場合は、介護職員は1名以上でよい)。指定訪問入浴介護事業所ごとに、職務に専従する常勤の管理者を配置しなければならないが、管理業務に支障がなければ、兼務も可能である。
(2)サービス利用にかかわる取り扱い方針は、利用者の身体に接触する設備・器具は、利用者1人ごとに消毒、使用後は洗浄および消毒を行う。皮膚に直接触れるタオル等は、利用者ごとに取り替える、又は個人専用のものを使用する。消毒方法などに関するマニュアルを作成し周知させる。
緊急時の対応は、主治医または協力医療機関に連絡する、などがある。
(3)介護報酬
介護職員のみ実施は減算・清拭または部分浴実施時に減算・同一建物減算

3.通所介護

1)通所介護とは

通所介護とは、在宅の要介護者に対し、入浴および食事の提供、相談及び助言、日常生活上の世話、機能訓練を行なうことによって、利用者の社会的孤立感の解消と心身機能の維持・向上を図り、その家族の、身体的精神的負担の軽減を図る

2)通所介護の内容

(1)利用者の健康・生活・疾病などに関する情報を集め、通所介護計画を作成する。通所介護の内容は、送迎方法、活動訓練の内容と、参加グループ、その他関わり方への配慮、心理的支援、家族への支援などがあり、個別性のある援助を行なっていく。また介護者の身体的社会的側面も把握しておく。
(2)通所介護を活用する視点は、外出と社会的な交流、家族介護の負担軽減、機能訓練、日常生活訓練、を比較的小グループでのサービスの提供を行なうことである。

3)人員基準

生活相談員1名以上、看護職員1名以上、介護職員、機能訓練指導員(機能低下を防止する訓練を行う能力のある者)を配置する。また常勤の管理者を配置することが必要である。生活相談員、介護職員のうち、1人以上が常勤であることが必要である。ただし利用定員が10人以下の通所介護事業所の場合、生活指導員、看護職員、介護職員のうち、1人以上常勤であることが必要である。

4)介護報酬

通所介護の介護報酬は、事業所規模(小規模型、通常規模型、大規模型)や、サービス内容、サービス提供時間、利用者の要介護度によって算定する単位数が異なる。
延長加算・入浴介助加算・中重度者ケア体制加算・個別機能訓練加算・認知症加算・若年性認知症受入加算・栄養改善加算・口腔機能向上加算・個別送迎体制加算・入浴介助体制強化加算・同一建物減算

5)療養通所介護

療養通所介護とは、難病などを有する重度要介護者や、がん末期の者であって、サービス提供にあたっては、常時看護師による観察が必要である者を対象に行う。療養通所介護計画を作成し、それに基づき、
入浴や排泄、食事等の介護、日常生活上の世話、及び機能訓練を行なう

療養通所介護の利用定員は、9人以下である。
※定員18名以下の小規模型通所介護、療養通所介護は平成28年4月から地域密着型サービスへ移行
※介護予防通所介護は平成29年までに地域支援事業の総合事業へ移行

4.短期入所生活介護

1)短期入所生活介護とは

特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、及び老人短期入所施設等において、短期間入所させ、入浴、排泄、食事等の介護、その他の日常生活上の世話、及び機能訓練を行なう。利用者が可能な限り居宅において自立した日常生活が送れるように、心身機能の維持改善をし、生活活動の活発化、家族が休養をとり、その身体的精神的負担の軽減を図ることを目的とする。

2)短期入所生活介護の内容

(1)自立支援の介護 1週間に2回以上の入浴または清拭、心身状態に応じた排泄自立の援助など
(2)食事の提供 出来るだけ離床し、食堂での食事など
(3)機能訓練
(4)健康管理
(5)相談及び援助
(6)その他のサービスを行なう
※個別援助計画の作成は、4日程度以上継続して利用する場合に行う。

3)人員基準

人員基準は、単独型、併設型、空床利用型、ユニット型に事業所が区別され、人員基準はやや異なるが、ほぼ基本は同じである。

管理者は常勤専従で1名(併設施設は兼務可)。医師は1人以上。生活相談員は、利用者1人~100人に1人(1人は常勤、利用者20人未満は非常勤も可)、介護、看護職員は、利用者3名に対し1人(常勤換算で1人以上は常勤、利用者20人未満は非常勤可)。栄養士は1人以上(40人以下で併設施設との連携あれば配置しなくても可)。機能訓練指導員は1人以上(併設施設との兼務可)。調理員その他は必要に応じた数を配置。

4)介護報酬

単独型、併設型、単独型ユニット型、併設型ユニット型に一日単位で算定
各加算
生活機能訓練体制加算・医療連携強化加算・夜勤職員配置加算・認知症緊急対応加算・若年性認知症受入加算・介護送迎加算・緊急短期入所受け入れ加算・長期利用者提供減算・療養食加算・中重度者受入加算

※介護予防短期入所生活介護は省略

5.特定施設入居者生活介護

1)特定施設入居者生活介護とは

有料老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム(ケアハウス)、サービス付き高齢者向け住宅で、特定施設の指定を受けた施設をいう。特定施設入居者生活介護の目的は特定施設サービス計画に基づき入所者の心身機能に応じた自立した日常生活への支援および利用者の要介護状態の軽減または悪化の防止に向けて意識的に取り組んでいくことである。

※外部サービス利用型特定施設入居者生活介護は、当該職員が計画の作成、安否確認、生活相談のいわゆる基本サービスを行い、その他の療養上の世話や機能訓練などの介護サービスは、委託された外部の居宅サービス事業者を利用してもらうものである。

2)特定施設入居者生活介護の内容

特定施設入居者生活介護は、特定施設サービス計画に基づき、入浴、排泄,食事などの介護、機能訓練および療養上の世話等のサービスを行う。

具体的には、

(1)介護
(2)健康管理
(3)相談および援助
(4)利用者の家族との連携
(5)緊急時の対応

などを行い、介護の提供は一週間に2回以上の入浴または清拭、状態に応じた適切な排泄自立の援助などの、日常生活の世話を行う。

3)人員基準

(1)生活相談員は利用者100人につき1人(1人以上は常勤)
(2)看護、介護職員は常勤換算で要介護者3人につき1人、介護予防サービス利用者は常勤換算で10人につき1人、看護職員1人以上、介護職員1人以上は常勤、看護職員は、30人以下の施設は常勤換算で1人、30人以上は50人増すごとに1人。
(3)機能訓練指導員は、機能低下を防止する訓練を行う能力のある者を1人以上(他の業務との兼務可)
(4)計画作成担当者は利用者100人で1人を標準(介護支援専門員、他の業務との兼務可)
(5)管理者は常勤の管理者を配置(管理上支障が無ければ他の業務との兼務可)

4)サービス開始について・その他

サービス開始時は
(1)運営規定、職員体制、利用料、事故発生時の対応などの重要事項を文書で説明し配布する。
(2)入居する際は、契約書をもって、契約の締結を行う。
(3)介護の開始で一般居室から介護居室への移行の意思確認を行うなど、必要な手続きは、契約書に明記する。
(4)入院治療などの場合は、医療機関を紹介するなどの対応を行う
(5)有料老人ホームが指定特定施設として、法定代理受領サービスを受けるためには、利用者の同意を得ておく必要がある。(2015年法改正により同意書の取り扱いは廃止)

5)介護報酬

要介護度別に算定(外部サービス利用型は基本部分とそれぞれの利用するサービスごとに算定)
個別機能訓練加算・夜間看護体制加算・医療機関連携加算・障害者等支援加算

※この特定施設入居者生活介護は、提供するサービスは施設サービスのような総合的なサービスを提供するため、居宅サービスの一つでありながら、支給限度基準額が適用されないサービスになっているので注意。

※介護予防特定施設入居者生活介護は省略

6.福祉用具

1)福祉用具とは

福祉用具を利用する目的
(1)自立の促進
(2)介護負担の軽減
福祉用具を利用することで、自立動作とともに介護動作が容易になり介護者の負担軽減、被介護者が快適に介護を受けることにつながる。

2)福祉用具の内容

福祉用具には、福祉用具貸与と特定福祉用具販売(購入)がある。
基本的には貸与だが、排泄や入浴関連用具など、貸与に馴染まないものが購入品目として指定されている。
障害者関連では、自立支援法に基づき、補装具、日常生活用具があるが、高齢者は介護保険制度を活用することが、優先される。

(1)福祉用具貸与の種目
a.車椅子およびその付属品
b.特殊寝台およびその付属品
c.床ずれ防止用具
d.体位変換器
e.手すり(工事を伴わない手すりが対象)
f.スロープ(工事を伴わないスロープに限定)
g.行器(車輪の有無は問わない、歩行時に支えとして使用するもので、フレーム内に体の一部が入る用具に限定)
h.歩行補助杖(多点杖などで、1本杖は対象外)
i.認知症老人徘徊感知機器
j.移動用リフト(つり具の部分を除く、工事を伴わず設置できるリフト)
k.段差解消機
l.浴槽用昇降座面
m.自動排泄処理装置(レシーバーなど貸与になじまないものは、購入種目)

(2)特定福祉用具販売品目
a.腰掛け便座
b.入浴補助用具
c.簡易浴槽(ベッドサイドで使用する浴槽、給排水のポンプも対象)
d.移動用リフトのつり具

(3)職員の配置
福祉用具貸与事業所(特定福祉用具販売を含む)には、福祉用具専門相談員を2人以上配置する。また常勤の管理者を配置する。
福祉用具専門相談員は福祉用具貸与計画、特定福祉用具販売計画の作成が義務付けられている。

※要支援1、2、要介護1、の人は、特殊寝台、車椅子、移動用リフトは、原則として利用できないが、例外も認められている。
(例外とは、(1)市町村が、要介護認定等の訪問調査の「基本調査の結果」を用いて要否を判断する場合、(2) 疾病その他の原因により、状態が変動しやすく、日によって又は時間帯によって、頻繁に福祉用具が必要な状態に該当する者等で、該当する旨が、医師の医学的な所見に基づいている。かつ、サービス担当者会議等を通じた適切なケアマネジメントにより、福祉用具貸与が特に必要と認められる。これらの条件を満たしていると、市町村が判断した場合。)

※介護予防福祉用具貸与・特定介護予防福祉用具販売は省略

7.住宅改修

1)住宅改修とは

住宅改修の目的は、生活環境を改善し、段差などの危険をなくし、対象者が身体状況に即した生活環境の確保で、健康的な在宅生活を継続できるよう、環境を確保することである。
(1)手すりなどで転倒などを防止し、移動動作を容易にし、生活動作の自立を図る。また、生活動作の自立促進を図る。
(2)介護負担を軽減する。
(3)外出しやすい環境にする。
外出の機会を増やすことで地域社会への参加を促進する
(4)在宅生活を継続することで介護保険サービスの費用や医療費を軽減する。

2)住宅改修の内容

(1)手すりのとりつけ
(2)段差の解消
(3)滑りの防止および移動の円滑化などのための床材変更
(4)引き戸などへの扉の取り替え
(5)引き戸の新設
(6)洋式便器などへの便器の取り替え
(7)その他上記の住宅改修に付帯して必要となる住宅の改修

3)住宅改修の支給額

(1)住宅改修の支給額は要介護状態区分に関わらず定額20万円である。18万円まで支給され、2万円は自己負担、20万円を超える費用は自費になる。
※一定以上の所得者の自己負担は2割となり上限は16万円

(2)要介護状態が著しく重くなった場合の例外
最初に住宅改修費の支給を受けた時点と比較して著しく要介護区分が重くなった場合(3段階以上の上昇)で、市町村が特に必要と認める場合は、以前に受けた改修費の額に関わらず改めてその時点で20万円の支給限度基準額までの住宅改修が可能である。
(この例外は1人の被保険者について1回限り。また、要支援1から要介護2になった場合は、2段階の上昇とみなされ、この例外にはあてはまらない。)

4)住宅改修の過程

(1)相談
利用者は住宅改修について、介護支援専門員などに相談し、情報提供や説明を受ける。

(2)支給申請(事前申請)
住宅改修は事前に市区町村に申請をすることになっている。住宅改修の事前申請を行うためには、住宅改修申請書や、住宅改修が必要な理由書、住宅改修に要する費用の見積書、住宅改修の予定の状態が確認できるものの申請書類を作成する必要がある。

(3)実際に住宅改修を行う

(4)住宅改修終了後、住宅改修に要した費用の領収書や工事費内訳書、改修前、改修後の写真などを提出する。

(5)住宅改修の支給が決定される。

※介護予防住宅改修は省略

8.介護老人福祉施設

1)介護老人福祉施設とは

介護老人福祉施設とは、老人福祉法に規定された特別養護老人ホーム(入所定員30人以上)であって、都道府県知事の指定を受けた施設をいう。

施設サービス計画に基づき、入浴・排泄・食事等の介護、その他の日常生活上の世話、機能訓練、健康管理および療養上の世話を行う。

2)介護老人福祉施設の内容

介護老人福祉施設は、施設サービス計画に基づきサービスを実施し、可能な限り在宅での生活への復帰を考え、入所者の意志と人格を尊重し、家庭的な雰囲気や地域・家庭との結びつきを重んじた援助を行う。具体的内容として

(1)介護は週に2回以上の入浴或いは清拭を行う
(2)排泄、自立の援助、適切なおむつの介助を行う
(3)離床、着替え、静養の援助を行う
(4)嗜好に配慮し、離床により、食堂での食事を行う
(5)教養、娯楽、健康管理、機能訓練の提供を行う
(6)相談援助や行政機関への代行事務の提供を行う など

その他
(1)サービスの開始、入退所において、重要事項説明書に運営規定、サービス内容、事故発生時の対応、苦情対応等を示し、説明をして同意を得ることになっている。
(2)原則要介護3以上の人を優先的に入所させる。(2015年より)
(3)入所者の入院期間中の取り扱いは、3ヶ月以内に退院できる見込みの場合は、退院後施設に円滑に入所できるようにする。(ベッドの確保)
(4)介護報酬
要介護度別・居室種類別
各加算
ユニットケア加算・個別機能訓練加算・若年性認知症受入加算・身体拘束廃止未実施減算・障碍者生活支援体制加算・退所前、退所後訪問相談援助加算・退所前連携加算・看取り加算・在宅復帰支援加算

3)人員基準

人員基準は、医師は非常勤が可、生活相談員は入所者100人に1人以上の常勤職員、看護・介護職員は常勤換算で3対1が基本である。

看護職員のうち1名以上は常勤、夜勤を含め常時1人以上の常勤職員を配置する。栄養士は1人以上配置、機能訓練指導員は1人以上配置、介護支援専門員は常勤職員を1人以上、100人またはその端数を増すごとに1名を配置、管理者は常勤職員を配置する。

4)ユニット型介護老人福祉施設

ユニット型介護老人福祉施設では、利用者に対し、入居前の居住での生活と入居後の生活が連続したものとなるように支援を行うものとされている。

ユニットの居室は原則として1人、ひとつのユニットはおおむね10人以下としている。またユニットケア提供による費用を徴収できることになっている。ユニットには、介護職員や看護職員が配置され、1ユニットに常勤のユニットリーダーを配置するとともに、昼間は1ユニットごとに常時1人以上、夜間は2ユニットごとに1人以上の介護職員または看護職員を配置することが規定されている。

9.地域包括支援センター

1)地域包括支援センターとは

地域包括支援センターは、包括的支援事業等を地域において一体的に実施する役割を担う中核機関であり、多種多様な資源を十分活用し地域に開かれたものとして設置される。
地域包括支援センターの設置者は、市町村、または、市町村から委託を受けた者であり、委託を受けることができる者として、老人介護支援センター(在宅介護支援センター)の設置者、一部事務組合または広域連合を組織する市町村、社会福祉法人、医療法人、包括的支援事業を実施することを目的として設置された一般社団法人、もしくは一般財団法人、またはNPO法人などがある。
地域包括支援センターは指定介護予防支援事業を行うこととされており、指定介護予防支援事業者にもなる。

2)職員配置基準

地域包括支援センターの職員配置基準は、担当区域の第1号被保険者おおむね3,000人以上6,000人未満毎に、保健師、社会福祉士、主任介護支援専門員を、専従で配置する必要がある。
この三職種を配置することが困難な場合は、保健師に準ずる者として、地域ケア、地域保健等に経験のある看護師、社会福祉士に準ずる者として、福祉事務所での業務経験5年以上または介護支援専門員の業務経験3年以上、かつ、高齢者の保健福祉に関する相談援助業務経験3年以上の者、主任介護支援専門員に準ずる者として、ケアマネジメントリーダー研修修了と介護支援専門員の経験があり、かつ、介護支援専門員の相談対応や地域の介護支援専門員への支援等に関する知識と能力のある者など、これらの者を配置することもできる。

◆第1号被保険者の数がおおむね1,000人未満の場合、配置すべき人員は、保健師等と社会福祉士等、主任介護支援専門員等のうち1人または2人を配置する。
◆第1号被保険者の数がおおむね1,000人から2,000人未満の場合は、保健師等、社会福祉士等、主任介護支援専門員等のうち2人、そのうち1人はもっぱらその職務に従事する常勤の職員であることが必要である。
◆第1号被保険者の数がおおむね2,000人から3,000人未満の場合は、もっぱらその職務に従事する常勤の保健師等を1人、および専らその職務に従事する常勤の社会福祉士等、主任介護支援専門員等のいずれか一人を配置することになっている。

3)地域包括支援センターの業務

(1)包括的支援事業:以下の4つの事業を一体的に実施する
①介護予防ケアマネジメント業務
二次予防事業対象者の把握事業において、市町村が把握・選定した二次予防事業対象者についての介護予防ケアプランを必要に応じて作成する。そのケアプランに基づき、介護予防事業等が包括的・効率的に行うよう援助する。
②総合相談支援業務
地域におけるネットワーク構築業務、専門機関や虐待防止などのネットワーク構築業務、高齢者の実態把握業務、総合相談支援業務
③権利擁護業務
成年後見制度等の活用促進、高齢者虐待への対応、困難事例への対応、消費者被害の防止など
④包括的継続的マネジメント支援業務
包括的継続的なケア体制づくり。介護支援専門員のネットワークづくり。日常個別指導や相談、支援困難事例への対応。
⑤在宅医療・介護の連携を推進する事業(平成30年4月にはすべての市町村で実施)
地域の医療・介護サービス資源の把握・切れ目のない在宅医療と介護サービスの提供体制の構築推進・医療介護関係者の情報共有、相談、研修への支援・普及啓発
⑥日常生活支援体制の整備その他を促進する事業
生活支援コーディネーター(地域支え合い推進員)、協議体の設置
⑦認知症に対する総合的な支援を行う事業
認知症初期集中支援チーム・認知症地域支援推進員の設置

(2)他職種協働による地域包括支援ネットワークの構築
行政職員、地域包括支援センター職員、介護サービス事業者、医療関係者、民生委員等から構成される会議体を主催し、設置・運営する、などがある。
※地域ケア会議の推進(平成27年度より介護保険法に規定)
地域包括支援センターが中心となり多職種共同による個別事例の検討等を行う

(3)指定介護予防支援
予防給付の対象となる要支援者の介護予防サービス計画の作成、介護予防サービス提供確保のために、介護予防サービス事業者等との連絡、調整などを行う。

(4)介護予防日常生活支援総合事業
2014年の制度改正により新しい総合事業として再編
※5.地域支援事業、1)地域支援事業の図を参照

(5)その他
二次予防事業対象者の把握に関する事業、介護予防に関する普及啓発を行う事業、などがある。

4)地域包括支援センター運営協議会

地域包括支援センター運営協議会は、市町村に設置され、地域の関係者全体で地域包括支援センターの運営を協議・評価する場となっている。運営にあたっての公平・中立を確保しつつ、円滑かつ適正な運営を図るために運営協議会の議を経ることとなっている。

10.地域密着型サービス

地域密着型サービスとは

市町村が指定したサービス事業者によって提供される介護サービスで、指定した市町村内に居住する要介護者が利用できるサービスである。
地域密着型サービスは、9種類ある。(定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、認知症対応型通所介護 、小規模多機能型居宅介護 、認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、看護小規模多機能型居宅介護、地域密着型通所介護)
※この9種類のサービスのうち、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」と「看護小規模多機能型居宅」は、保健医療サービス分野の試験範囲である

なお、地域密着型介護予防サービスは、市町村内に居住する要支援者が利用できるサービスで、3種類ある。(介護予防認知症対応型通所介護、介護予防小規模多機能型居宅介護、介護予防認知症対応型共同生活介護)

1)夜間対応型訪問介護

(1)夜間対応型訪問介護とは
24時間安心して自宅で生活できる体制を作るため,夜間の定期的巡回による訪問介護と,通報による随時対応の訪問介護を組み合わせたサービスが提供される。(日中のオペレーションセンターサービスも行っている)

(2)夜間対応型訪問介護の内容
夜間対応型訪問介護は、要介護者を対象に「定期巡回サービス」、「オペレーションセンターサービス」、「随時訪問サービス」を一括して提供する。
定期巡回サービスでは、夜間対応型訪問介護計画に基づき、利用者が安心して居宅生活を送れるようにする。
随時訪問サービスでは、夜間対応型訪問介護計画に基づき、随時の連絡に対応し、オペレーションセンター職員が、1月から3月に1度、居宅を訪問し、利用者の心身等の状況の把握等を的確に行う。

(3)人員基準
オペレーションセンターサービスの従業者は、看護師、介護福祉士、医師、保健師、社会福祉士、介護支援専門員、准看護師である。

2)認知症対応型通所介護(認知症対応型デイサービス)

(1)認知症対応型通所介護とは
認知症の要介護者に対し、小規模な家庭的な環境の中で、日常生活上の世話、機能訓練を行い、社会的孤独感の解消や心身機能の維持、家族の介護負担軽減を図る。

(2)認知症対応型通所介護の内容
・単独型(他の施設に併設されていない事業所)
・併設型(社会福祉施設等に併設されている事業所)
・共用型(認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設、地域密着型介護老人福祉施設において、そこの入居者等と共に行う)

(3)設備基準等
単独型と併設型の利用定員は、12人以下である。
共用型は、グループホーム等の共同スペースを活用して、利用定員は、1日の同一時間帯に、3人以下である。

3)小規模多機能型居宅介護

(1)小規模多機能型居宅介護とは
要介護者の住み慣れた地域で「通い」を中心に,利用者の容態や希望に応じて,随時,「訪問」や「泊まり」を組み合わせ,サービスが提供される。

(2)小規模多機能型居宅介護の内容
地域住民との交流や地域活動への参加を図りつつ、登録される利用者の状況や希望に応じて、随時訪問や宿泊のサービスを組み合わせてサービスを提供する。
登録者に対して、この事業所の介護支援専門員が居宅サービス計画の作成等の、ケマネジメントを担当する。(居宅介護支援は行われない。)
登録者は、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、福祉用具貸与以外の居宅サービスは、利用できない。

(3)人員・設備基準等
・介護従事者は介護福祉士等の資格は必要ないが、介護の知識・経験は必要。従業者のうち1名以上が看護師または准看護師であること。
・夜間及び深夜帯は、宿泊者がいる場合、夜勤1名、宿直1名、計2名を配置する。(宿泊者がいない場合は、訪問サービス体制が整備されていれば、夜勤または宿直を置かなくてよい。)
・登録人員は29人以下、通いサービスは登録定員の2分の1以下から15人までの間、宿泊サービスは、通いサービスの利用定員の3分の1から9人までの間で、それぞれ利用定員を定める。

※サテライト型事業所は、本体事業所との距離が自動車でおおむね20分以内、 一つの本体事業所につき、2か所まで設置が可能。登録定員は18人以下として、管理者は本体の管理者が兼務可能である。

4)認知症対応型共同生活介護(グループホーム)

(1)認知症対応型共同生活介護とは
認知症の要介護者が、家庭的な環境と地域住民との交流の下に、少人数で共同生活をしながら,介護スタッフによる入浴,排泄,食事などの介助,日常生活の世話や機能訓練を行う。

(2)認知症対応型共同生活介護の内容
人格を尊重し、それぞれの役割をもって日常生活を送る配慮をし、認知症対応型共同生活介護計画に基づき、漫然かつ画一的にならない援助を行う。やむを得ない場合を除き、身体拘束・行動の制限を行ってはならない。(身体拘束等を行う場合は、その理由を記録する。)

(3)人員・設備基準
・介護従事者は認知症の介護等に対する知識・経験を有し、必要な研修を修了している者を配置する。
・計画担当作成者は、共同生活住居ごとに配置し、1つの共同生活住居は介護支援専門員の配置、2つ以上の共同生活住居は少なくとも1人は介護支援専門員であることが必要。計画作成担当者は、管理者との兼務可)
・居室の面積(4.5畳以上)とともに、廊下、居間等につながる出入口があり、他の居室と区分されている。

5)地域密着型特定施設入居者生活介護

(1)地域密着型特定施設入居者生活介護とは
小規模な有料老人ホームなどで,食事や入浴,排泄の介助、日常生活上の世話、機能訓練などを行い、能力に応じた自立した生活を営めるように支援する。
有料老人ホーム、養護老人ホーム、軽費老人ホーム、適合高齢者専用賃貸住宅で、入居者が要介護者と配偶者等に限られる介護専用型特定施設のうち、入居定員が29人以下のものをいう。

(2)地域密着型特定施設入居者生活介護の内容
地域密着型特定施設入居者生活介護は、この事業所の介護支援専門員が作成する地域密着型特定施設サービス計画に基づき提供される。利用者は居宅療養管理指導を除き、他の居宅サービスを利用することができない。

(3)人員基準
・生活相談員1人以上
・看護師・准看護師・介護職員は、常勤換算で利用者3人又はその端数を増すごとに1人以上(看護職員は常勤換算で1人以上、常にサービス提供の介護職員は1人以上)
・機能訓練指導員は1人以上
・計画作成担当者は1人以上(介護支援専門員)

6)地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

(1)地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護とは
居宅における生活への復帰を念頭に、食事,入浴,排泄などの介護、日常生活上の世話、機能訓練、健康管理などを行うことで、能力に応じた自立した生活を営めるように支援する。
定員29人以下の特別養護老人ホームである。

(2)地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護の内容
・単独型
・同一法人本体施設のあるサテライト型
・通所介護・小規模多機能型居宅介護との併設型
地域密着型施設サービス計画に基づき、漫然かつ画一的にならない援助を行う。やむを得ない場合を除き、身体拘束・行動の制限を行ってはならない。(身体拘束等を行う場合は、その理由を記録する。)

(3)人員基準
・生活相談員1人以上(サテライト型は常勤換算で1人以上)
・看護師・准看護師又は介護職員は、常勤換算で、利用者3人又はその端数を増すごとに1人以上。(看護職員は常勤換算で1人以上、常にサービス提供の介護職員は1人以上)
・栄養士1人以上
・機能訓練指導員は1人以上
・介護支援専門員は1人以上
(サテライト型は、本体職員により、入所者の処遇が適切に行われる場合、医師・生活相談員・栄養士・機能訓練指導員・介護支援専門員は置かないことができる。)

11.基礎相談・面接技術

1)相談面接における基本姿勢

相談面接における基本姿勢とは、相談者の人権を尊重し、人間性を受け止め、現実的で柔軟でなければならない。また、援助する相手の主体的取り組みで課題が解決されるよう援助していく。

2)相談面接における基本視点

(1)相談者の人権尊重と権利擁護に留意する。
(2)相談者の生活全体を把握する。
(3)自立支援、自己決定、社会参加の拡大に配慮する。
(4)専門的援助関係の確立と職業倫理を保持する。

3)相談面接における8つの実践原則

(1)個別化の原則(相談は個別のニーズを出発点として、ケアの提供等も個別に合わせる)、
(2)受容と共感の原則(受容は、本人の人格、尊厳を認めて、行動の背景にある感情も承認する。共感は受容の基盤であり、相互理解である。)
(3)意図的な感情表出の原則(相談者の不安等、感情を表出する機会を与える。)
(4)統制された情緒関与の原則(相談者は、表出された感情を理解するが、感情的に巻き込まれない態度を明確にしつつ情緒的レベルで関与する。)、
(5)非審判的態度の原則(相談援助者の価値観や社会通念から一方的に評価したり、意見を述べたりしない。)
(6)自己決定の原則(相談者が主体的な選択や決断ができるようにする。)
(7)秘密保持の原則(秘密保持は、職業倫理として相談の前提である。)
(8)専門的援助関係の原則(相談にあたっては、専門的援助者の立場を崩さず、個人的関心や都合で対応する事はしない。)

4)コミュニケーションの知識と技術

面接は双方のコミュニケーションである。相談者が投げかけるメッセージを受け止め、援助者の伝えたい提案・意見等をすべて伝える知識と技術が必要である。

(1)面接する上でのポイント
・共感的相互理解を追求し、誠実に対応する。
・言葉だけでなく、音声や抑揚、しぐさや視線(非言語的コミュニケーション)にも注意をする。
・自己紹介の仕方、相槌の打ち方、質問の仕方、受容的、非審判的な応答の仕方を工夫するとともに、時間配分、情報のまとめ方、問題の焦点を相互に理解できる言葉で表現する、次回の面接へのつなげ方等にも工夫をする。
・面接の場所、椅子や部屋の雰囲気や、職員の服装、書類の形式等に配慮する。

(2)コミュニケーションの基本技術
・相談援助者である基本姿勢を維持する。相手に言語的・非言語的手段で、相談援助者としての姿勢と基本的態度を表明する。
・相手のペースを乱さず、相手の伝える事柄やその背後の情緒を受け止め、相手との波長を合わせることで、傾聴する。更に相手を十分に観察する。
・質問の形式を工夫する。必要に応じて、オープンクエスチョン、クローズドクエスチョンを使い分ける。
・励まし・明確化・要約を行い、相談者の気持ちを汲み取り、確認することで、相談内容の問題を絞り、明確化していく。そして、それを双方で認識し合う。
・励ましや、不安を取り除く等の支持的働きかけとともに、情報提供、環境整備、対人関係について、助言や提案等を行うのなどの積極的な働きかけを行う。場合によっては、これまでの対処方法の修正を加える。

5)インテーク技術

インテーク面接とは、受理面接または受付面接とも言われる。
相談者と面接者が相談のためにある場所で会い、状況と課題を確認し合い、利用できるサービスや援助の計画を話し合って、契約を結ぶまでの、一連の流れを総称している。インテーク面接は、以下の6つの部分から構成されている。

(1)導入と場面設定
(2)主訴の聴取と必要な情報交換
(3)問題の確認と援助目標の仮設定
(4)援助計画、援助期間、援助方法の確認
(5)援助に関する契約(相談者の意思の確認)
(6)終結

12.ソーシャルワーク

1)ソーシャルケースワーク(個別援助技術)

(1)ソーシャルケースワークとは
ソーシャルワークは相談者(クライエント)の課題を個別的に解決・援助する方法である。援助者(ソーシャルワーカー)は、相談者に対する受容的・非審判的態度の原則に立って、直面している問題への情緒的反応を含めた自己実現を促進しつつ、共感的で、しかし統制された情緒的関与者として働きかけることで、相談者が自ら問題を解きほぐし、自己決定を行えるように援助をしていく。

(2)ケースワークの過程
ケースワークを「インテーク」、「ケーススタディ」、「社会診断」、「社会治療」の4つの段階に分けて考える場合がある。また、問題の把握、資料収集、援助目標と援助計画の策定、援助活動の展開、評価などの部分に分けて捉える考え方もある。

2)ソーシャルグループワーク(集団援助技術)

(1)ソーシャルグループワークとは
集団の場面や集団の関係に対して(働きかけをして)、社会福祉援助技術を行う方法である。

(2)ソーシャルグループワークの原理
・他のメンバーの行動を観察する機会がもたらす効果
・メンバーの中に共通の問題を発見することによる効果
・集団内での役割交換の効果
・現実吟味と社会的学習機会の拡大効果
・援助を他人と分かち合う体験の効果

(3)グループワーカーの働きかけ
集団過程は、その過程を成り行きにまかせず、グループワーカーが意図的に介入する事もある。意図的介入は以下の5つである。
・グループに対する援助者の関係(教師・リーダー・統率者等)の適切な選択
・メンバーと援助者の関係(受容的・非審判的・教育的等)の意図的活用
・メンバー相互間の関係の活用
・活動プログラム(工作・ゲーム・演劇・野外活動等)の経過と実施過程の、そのものがもつ効果の活用
・集団組織形態の選択と活用
これらを活用して、メンバーの個別的ニーズ、グループ活動の促進、相互関係の変容に向かって働きかけていく。

3)コミュニティワーク

(1)コミュニティワークとは
地域社会を働きかけの対象として、個別ニーズに対応する社会資源の開発や、個人にとって快適で望ましい地域社会に発展させていく、この2つの視点をもって社会福祉援助技術を行うものである。

(2)コミュニティワークの活動領域
・サービスの開発のための調査、企画する領域
・地域社会内の各種ボランティア団体の協力等を促進する領域
・各種団体・組織間の連絡調整の領域
・既存の地域集団を援助し、地域福祉計画作成に参加させる領域

13.援助困難事例への対応

1)援助困難事例とは

高齢者や家族等が客観的にみて援助の必要性が高いにもかかわらず、援助を拒否している、閉じこもり、放置や虐待などの問題が発生している事例のことをいう。

2)援助困難事例の理解とアプローチ

援助困難事例の理解とアプローチは、5つの視点と6つの対応が重要である。

(1)5つの視点
・積極的援助を必要とする人に接近する。
・問題発見の仕組みをつくる。
・信頼関係を樹立する。
・観察と情報収集。
・全体の課題分析と事例検討会。 以上が事例を理解する上で大事な点である。

(2)6つの対応
・共感的理解を示す対応。
・正しい知識や情報の提供と、援助者の教育的働きかけによる対応。
・より深刻な問題への具体的対応。
・家族関係調整のための対応。
・社会資源の活用と開発による対応。
・強力な介入による対応

以上が事例にアプローチをしていく際に重要となる。

14.障害者総合支援法

障害者自立支援法は「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」として大きく改正され、2013(平成25)年4月から段階的に施工された。

1)対象者

障害者自立支援法では身体障害、知的障害、精神障害に加え2012年からは発達障害がサービスの対象になり、障害者総合支援法の施行により難病患者も対象に含まれることになった。

2)障害者総合支援法によるサービス

障害者総合支援法は市町村が実施主体となり、個別に支給決定が行われる自立支援給付と、地域の実情に合わせて実施する地域生活支援事業に大別される。

(1) 自立支援給付
自立支援給付は、障害の種別にかかわらず、全国一律の共通したサービスが提供される。その内容は下記の表のようになっている。

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自立支援給付を受給するための手続きの流れは以下の通り。

1、受給希望者はまず市町村に申請を行う。
2、申請を受けた市町村は面接調査によるアセスメントを行い一次判定を行う。
3、その結果や概況調査、医師意見書等を基に市町村審査会で二次審査をおこない障害支援区分を認定する。
4、その結果を申請者に通知し、更に申請者に対してサービス利用意向聴取が行われ、最終的な審査会の意見聴取を経て支給の決定が行われる。

なお、自立支援給付を受給する為には障害支援区分の認定を受ける必要がある。

※障害支援区分とは、障害者自立支援法で用いられていた障害程度区分に代わり、2014年度に改定された新しい区分である。
障害者自立支援法では障害の重さを基準としていたが、障害支援区分では障害の多様な特性や心身の状態に応じて支援の度合いを総合的に示す区分になった。

(2) 地域生活支援事業
地域生活支援事業は、市町村が実施するものと、高い専門性や広域的な対応が必要となるため都道府県が支援し、実施するものがある。
また、市町村が実施する事業は、必ず実施しなければならない必須事業と地域の実情や利用状況に応じて行う任意事業に分けられる。

※市町村が実施する必須事業として、理解促進研修・啓発事業、自発的活動支援事業、相談支援事業、成年後見制度利用支援事業、成年後見制度法人後見支援事業、意思疎通支援事業、日常生活用具給付等事業、手話奉仕員養成研修事業、移動支援事業、地域活動支援センター機能強化事業がある。

(3) 日中活動事業と居住支援事業
施設で行われるサービスの区分は、主に、日中活動事業では、自立支援給付の介護給付(療養介護・生活介護)や訓練等給付(自立訓練・就労移行支援・就労継続支援)、地域生活支援事業の地域活動支援センターがある。居住支援事業では、障害者支援施設の施設入所支援または、居住支援として訓練等給付(共同生活援助)や地域生活支援事業の福祉ホームがある。
このような区分を設けることにより、施設を退所した障害者が、施設で利用していたサービスを組み合わせて居宅で使い続けることができるようにしている。
※2014年度から共同生活介護(ケアホーム)は共同生活援助(グループホーム)へ一元化された。

3)財源と利用者負担

利用者負担は、原則所得に応じて負担上限額が設定される応能負担である。
但し、1割負担のほうが、負担が軽くなる場合は1割負担となる。財源は利用者負担のほか、国が2分の1を、都道府県と市町村はそれぞれ4分の1を負担する。

4)障害福祉計画

国の定める基本方針に基づき、必要なサービス量とそれを確保するため、地方公共団体に3年を1期として策定を義務付けている。障害者総合支援法の施行にともない以下3点の見直しがある。

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15.生活保護制度

1)生活保護制度とは

日本国憲法第25条に規定された生存権を具体化する制度のひとつとして制定された。国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的としている。

2)生活保護の原理・原則

(1)生活保護の原理
・国家責任の原理
・無差別平等の原理
・最低生活保障の原理
・補足性の原理

(2)生活保護の原則
・申請保護の原則
・基準及び程度の原則
・必要即応の原則
・世帯単位の原則

3)生活保護の種類

生活扶助、教育扶助、住宅扶助、医療扶助、介護扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助の8種類である。
このうち、金銭給付は、生活扶助、教育扶助、住宅扶助、出産扶助、生業扶助、葬祭扶助、現物給付は、医療扶助、介護扶助である。

4)介護扶助について

介護保険の被保険者の場合は、介護保険の給付(9割)が優先し、保険給付の行われない自己負担分(1割)が生活保護法の介護扶助の対象となる。

介護保険の被保険者でない40歳以上65歳未満の被保護者で、介護保険法で規定する特定疾病により要介護又は要支援の状態にある者については、全額が介護扶助の対象となる。給付の対象は、介護保険の被保険者と同等のサービスである。

(1)介護扶助の範囲
要介護者に対するもの 要支援者に対するもの
・居宅介護
・福祉用具
・住宅改修
・施設介護
・移送
・介護予防
・介護予防福祉用具
・介護予防住宅改修
・移送
(介護保険でいう地域密着型サービスは居宅介護・介護予防のサービスに含まれる。)

(2)介護扶助の支給方法
介護扶助は現物給付によって行う。ただし、現物給付が適当でない等の場合、金銭給付によって行う。

(3)介護保険と介護扶助の費用負担
第1号被保険者 介護保険 9割 介護扶助1割
第2号被保険者 介護保険 9割 介護扶助1割
被保険者外 介護扶助10割

(4)要介護認定及び居宅介護支援計画の作成
要保護者は、一般の被保険者と同様に要介護認定を受け、要介護度に応じた保険給付および介護扶助を受ける。被保険者以外は要介護認定を、生活保護制度独自で行う。
居宅介護にかかる介護扶助の申請は、居宅介護支援計画等の写しを添付する。(被保険者以外の者が介護扶助を申請するときは、居宅介護支援計画等の写しは必要ない。)
居宅介護支援計画等は、生活保護の指定居宅介護支援事業者が作成した居宅サービス計画であることが必要である。

16.高齢者虐待について

1)高齢者虐待とは

高齢者の虐待には、他者からの虐待と自分自身による虐待がある。

(1)他者からの虐待
・身体的虐待
・介護放棄・拒否・怠慢(ネグレクト)
・心理的虐待
・性的虐待
・経済的虐待

(2)自分自身による虐待
・食事、服薬の拒否や自傷自害行為

2)被虐待高齢者の現状

(1)女性の方が被害者となるケースが多い。(全体の約8割)
(2)前期高齢者よりも、後期高齢者の方に被害が多い。
(3)自立よりも、要介護高齢者の方に被害が多い。その中でも認知症高齢者の割合が高い。

3)加害者の状況

息子が最も多く(42.6%)、夫(16.9%)、娘(15.6%)の順になっている。

4)虐待の対応

分離を行った事例は、全体の32.5%と、約3分の1を占める。
分離対応の内訳は、「契約による介護サービスの利用」が37.7%、「医療機関への一時入院」が20.1%、「やむを得ない事由による措置」が12.4%となっている。

5)対応機関

高齢者虐待防止法では、「虐待防止」、「虐待を受けた高齢者の保護」、「養護者に対する支援」の一義的責任は、市町村が担うこととしている。高齢者虐待への対s応は、地域包括支援センターの業務としても、位置づけられている。

①高齢者の生命又は身体に重大な危険を生じている場合は、市町村に通報しなければならない(通報義務)
②上記①以外の場合は市町村に通報するよう努めなければならない(努力義務)

17.成年後見制度

1)成年後見制度とは

認知症、知的障害、精神障害等により、判断能力が不十分であるため、意思決定が困難な者の判断能力を、後見人が補っていく制度である。
後見人の職務は、「財産管理」と「身上監護」である。

2)成年後見制度の概要

(1)法定後見制度
本人、又は4親等内の親族の申し立てに基づいて、家庭裁判所が本人の判断能力に応じて、「後見人」、「保佐人」、「補助人」を選任する。

・後見
判断能力を欠く状況にある者を保護する。(常に自分で判断して法律行為をすることはできないという場合)
家庭裁判所は本人のために成年後見人を選任し、成年後見人は本人の財産に関するすべての法律行為を本人に代わって行うことができる。(ただし、本人の居住用財産を処分する場合は、家庭裁判所の許可が必要) また、成年後見人または本人は、本人が自ら行った法律行為に関しては日常行為に関するものを除いて取り消すことができる。

・保佐
判断能力が著しく不十分な者を保護する。(簡単なことであれば自分で判断できるが、法律で定められた一定の重要な事項については援助が必要という場合)
家庭裁判所は本人のために保佐人を選任し、保佐人に本人の一定の行為について同意を与える権限(同意権)を与える。 さらに、保佐人に対して当事者(本人同意の下、保佐人等)が申し立てた特定の法律行為について代理権を与えることができる。また、保佐人または本人は本人が自ら行った重要な法律行為に関しては取り消すことができる。

・補助
判断能力が不十分な者を保護する。(大抵のことは自分で判断できるが、難しい事項については援助が必要という場合)家庭裁判所は本人のために補助人を選任し、補助人には当事者が申し立てた特定の法律行為について代理権または同意権(取消権)を与えることができる。

(2)任意後見制度

任意後見制度は、本人が契約の締結に必要な判断能力を有している間に、将来自己の判断能力が不十分になったときのために、後見事務の内容と後見人(任意後見人)を、自ら事前の契約によって決めておく制度である。

公正証書を作成して、本人と任意後見受任者が、任意後見契約を行い、公証人が後見登記の申請を行う。そして、必要に応じて、家庭裁判所に任意後見監督人の選任を申し立て、選任されると任意後見が開始される。

任意後見人に不正等がある場合は、家庭裁判所は、任意後見監督人の報告を受けて、任意後見人を解任できる。

18.日常生活自立支援事業

1)日常生活自立支援事業とは

認知症高齢者をはじめ知的障害者、精神障害者等を対象に、福祉サービスの利用援助や日常的な金銭管理の援助を行うことにより、地域のなかで安心した生活ができるよう支援することを目的としている。事業の実施主体は、都道府県・指定都市社会福祉協議会であり、窓口は、市区町村社会福祉協議会である。

2)日常生活自立支援事業の内容

利用にあたっては、利用希望者が基幹的社会福祉協議会などに相談をする。それにより、社会福祉協議会の専門員が利用者本人と面接し「契約締結判定ガイドライン」に基づく調査を行い、援助の必要性や本人の利用意思を確認する。そして、この事業の対象の要件に該当するか判断を行い、該当する場合は、支援計画が策定され、利用契約が締結される。
契約締結後、生活支援員が支援計画に基づき、本人の援助を行う。生活支援員は、援助内容の記録を作成し、社会福祉協議会へ報告する。
利用料は利用者負担となる。

3)具体的な支援内容

(1)福祉サービスの利用援助(福祉サービスの利用に関する相談や情報の提供 、福祉サービスの利用申込みに必要な手続き、福祉サービスの利用料を支払う手続き 、福祉サービスについての苦情解決制度を利用する手続き)

(2)日常的金銭管理サービス(年金等の受領に必要な手続き、税金、社会保険料、医療費等を支払う手続き、日常生活に必要なお金の支払、払戻しの手続き)

(3)書類等預かりサービス(預かり可能な書類等は、年金証書、定期預金証書、権利証、実印、銀行印等)
・その他の援助を行い、定期的に訪問し、生活の変化を察知するように努める。

4)介護保険の利用に関わる事業内容

「申請手続きの援助」、「認定調査の立会い等」、「事業者との契約に関する援助」、「アセスメント、サービス計画作成等への立会い等」、「利用料の支払い援助」、「苦情解決制度への手続き等援助」等である。

山口あき子
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