保健医療サービスの知識等(基礎):27年度-問題26
次の記述について、より適切なものはどれか。
3つ選べ。
1 CRP(C反応性たんぱく質)は、感染症などによる炎症の程度を示す。
2 胸部X線検査は、結核などの呼吸器疾患だけでなく、うっ血性心不全などの心疾患の診断にも有用である。
3 ノロウイルス感染症では、下痢などの症状がなくなれば、感染力はない。
4 ウイルス感染では、白血球数が上昇する。
5 尿検査は、糖尿病や腎臓病だけでなく、尿路感染症の診断にも有用である。
◆ポイント◆
この問題では、高齢者に多い疾患を見分ける各種の検査について問われている。疾患ごとに特徴的な症状と検査を整理して押さえておくとよい。選択肢に登場しているCRP(C反応性たんぱく質)は、血液中の蛋白の一種を測定した値であり、体内に炎症が発生しているかどうかの判定に用いられる。加齢自体で値が増加の傾向にあるが、感染症・悪性腫瘍・膠原病・梗塞などで値が高くなる。また、うっ血性心不全とは、心臓の働きの悪化により肺や末梢の組織にむくみが生じ、息苦しくなる状態である。
◆答えの解説◆
1=○
血液検査で判定されるCRPは、炎症による組織の破壊で上昇する。リウマチでも上昇する場合があるが、インフルエンザや風邪では大きく上昇することはないとされる。したがってこの記述は適切である。
2=○
胸部X線検査は、肺・気管・横隔膜や心臓・大血管などを調べることができる。肺炎・肺がん・肺結核など肺の病気のほか、心臓の病気の検査にも使われる。したがってこの記述は適切である。
3=×
ノロウイルス感染症では、下痢などの症状がなくなった後2~3週間(長ければ1か月)は、便からウイルスの排出があるとされている。したがってこの記述は適切ではない。
4=×
ウイルス感染の場合、白血球数は正常値か減少となる。したがってこの記述は適切ではない。なお、細菌感染・炎症や白血病の場合には白血球数は上昇する。
5=○
細菌感染などによる尿路感染症では、尿検査で白血球反応や潜血反応が陽性になることが多く、診断に有用である。したがってこの記述は適切である。
保健医療サービスの知識等(基礎):27年度-問題27
低栄養について、より適切なものはどれか。
3つ選べ。
1 浮腫や腹水がみられる場合には、低栄養も疑われる。
2 高齢者の低栄養は、ビタミンとミネラルの摂取不足が主な原因である。
3 低栄養は、褥瘡の発生要因の一つである。
4 仲間と一緒に食事をすることは、食事以外に関心が向き、食欲を減退させるため、低栄養のリスクを高める。
5 上腕や下腿の周囲長は、寝たきりなどで体重測定が難しい場合の低栄養の判定に使われる。
◆ポイント◆
この問題では、高齢者に多くみられる症状である低栄養についての知識が問われている。高齢者に多い低栄養は、①食事の量が減少することで体内に吸収される栄養が減る、②栄養を吸収する機能が低下する、③日中の活動量の低下や薬物の影響で食欲が低下する、などの様々な要因で起こる。食事の量が同じでも低栄養になる可能性があり(②参照)、注意を要する。低栄養になると、体重が減少し、疲労や筋力・意欲の低下が起こりやすくなる。浮腫【むくみ】・褥瘡・脱水症なども生じやすい。低栄養の診断は、タンパク質の一種である血清アルブミン値を主に用い、体重やBMI、また上腕三頭筋皮下脂肪厚も材料にして判断する。
◆答えの解説◆
1=○
腹水は低栄養で生じることがある。また、低栄養で血清アルブミン値が低下することで、浮腫が生じることもある。したがってこの記述は適切である。
2=×
高齢者の低栄養では、タンパク質とエネルギー(糖質・脂質)の不足が主な原因であるとされる。したがってこの記述は適切ではない。
3=○
低栄養は、痩せて骨が突出するなど、褥瘡の発生要因の一つとなっている。したがってこの記述は適切である。
4=×
仲間と一緒に食事をすること(共食)は、心身両面で好影響があり、食欲は増進していくと考えられる。したがってこの記述は適切ではない。
5=○
上腕の周囲長は体脂肪・筋肉量の目安となり、また下腿の周囲長は体重と相関するといわれていることから、体重測定が困難な場合の低栄養の判定に用いられる。したがってこの記述は適切である。
保健医療サービスの知識等(基礎):27年度-問題28
嚥下や口腔ケアについて、より適切なものはどれか。
2つ選べ。
1 片麻痺による運動障害や感覚障害がある場合には、麻痺側の口腔内が汚れやすくなる。
2 成人の唾液の1日の分泌量は、100~200mlといわれている。
3 嚥下機能が低下している場合には、感覚が鈍くなるので、氷などの冷たいものを口に入れることは避ける。
4 口腔ケアは、口腔内細菌を減少させるので、誤嚥性肺炎の予防に有効である。
5 義歯が本人に合っている場合には、義歯を外さないで口腔ケアを行う。
◆ポイント◆
この問題では、嚥下と口腔ケアに関する知識が問われている。口腔ケアの目的は、口腔内を清潔に保ち、唾液の分泌を促すことである。唾液には自浄作用もあり、口臭の予防にもなる。高齢で嚥下機能や咳反射(むせること)が低下すると誤嚥(食物などが気道に侵入すること)を起こしやすくなる。口腔内の細菌の誤嚥により肺炎(誤嚥性肺炎)を生じることもあり、口腔ケアはその予防の意味でも重要である。義歯を用いている高齢者も多いが、義歯は必ず外して、流水下で傷がつかないようにブラッシングする。また、義歯は湿潤させた状態で保管するようにする。
◆答えの解説◆
1=○
その通りである。麻痺側は感覚がないことから、食べ物の残りかす(食物残渣)があっても気が付きにくく、溜まりやすい。したがってこの記述は適切である。
2=×
成人の1日の唾液分泌量は、1~1.5リットルといわれている。したがってこの記述は適切ではない。
3=×
冷たいものを口に入れることで口腔に刺激を与えることができ、唾液の分泌を活性化することができる。また、嚥下反射も起こりやすくなる。したがってこの記述は適切ではない。
4=○
誤嚥性肺炎は、口腔内で増殖した細菌が要因であることから、口腔ケアをしっかりと行うことで誤嚥性肺炎を予防することができる。口腔ケアを行えば唾液の分泌も活性化され、細菌の増殖は抑えられる。したがってこの記述は適切である。
5=×
義歯と歯茎の間に汚れが溜まりやすいので、本人に合っている場合でも、義歯は外して口腔ケアを行うことが重要である。したがってこの記述は適切ではない。
保健医療サービスの知識等(基礎):27年度-問題29
薬剤について、より適切なものはどれか。
3つ選べ。
1 服薬が困難な場合には、貼付剤など他の剤型の薬剤の使用も考慮する。
2 腎機能が低下している場合には、血中濃度が下がるため、抗菌薬を使用するときは、適宜増量する。
3 BPSD(認知症の行動・心理症状)がある場合には、漢方薬は使用しない。
4 飲み忘れを防止するためには、「お薬カレンダー」などを利用する。
5 降圧剤を内服中の高齢者は、薬の作用により転倒しやすい。
◆ポイント◆
この問題では、高齢者の介護において気を付ける必要がある薬剤についての知識が問われている。老化に伴い様々な症状が出てくるため、複数の薬剤を服用していることが多く(平均で4~5種類)、飲み間違い・飲み忘れなどの問題が生じやすい。また、腎機能が低下している高齢者の場合、体内に薬が残存するため副作用が出やすいという問題もある。薬剤について正しい知識を身につけておく必要がある。
◆答えの解説◆
1=○
服薬が難しい場合、貼付剤・坐薬など他の剤型の薬剤を、本人の機能や状態に応じて用いることが可能である。認知症で服薬が困難となっている場合もそれで対応できる場合がある。したがってこの記述は適切である。
2=×
腎機能が低下すると薬剤の血中濃度は下がりにくくなる。腎臓から薬が排泄されにくくなるからである。したがってこの記述は適切ではない。処方された薬の量を勝手に増減するなどの判断をしてはならない。
3=×
BPSDであるからといって、漢方薬を使用しないということはない。したがってこの記述は適切ではない。なお、BPSDによる興奮に効果のある漢方薬もある。
4=○
薬の服用忘れや間違いの予防のため、「お薬カレンダー」の利用は有効である。他に、服薬ポケット・服薬アラームなどの道具もある。したがってこの記述は適切である。
5=○
降圧剤の副作用として、ふらつき・めまい・立ちくらみなどがあるため、転倒に注意をする必要がある。したがってこの記述は適切である。他に、筋肉痛・便秘・息切れなどの副作用もある。
保健医療サービスの知識等(基礎):27年度-問題30
介護保険施設について適切なものはどれか。
3つ選べ。
1 老人性認知症疾患療養病棟は、BPSD(認知症の行動・心理症状)のために在宅や他の施設での療養生活が難しい要介護者が入院する施設である。
2 介護老人保健施設には、肺炎、尿路感染症又は帯状疱疹について、投薬、検査、 注射、処置等を行った場合の加算がある。
3 介護老人保健施設は、在宅復帰を目指す施設であるため、看取りは行わない。
4 介護老人保健施設は、地域の住民やボランティア団体等との交流が制限されている。
5 介護老人保健施設は、要介護度や所得の多寡を理由にサービスの提供を拒否することが禁止されている。
(注)選択肢4及び5は、「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準」(平成11年厚生省令第40号)の定める内容による。
◆ポイント◆
この問題では、各種の介護保険施設についての知識が問われている。本問で中心的に問われた介護老人保健施設は、在宅復帰を目指した医療系のサービスであり、病院と在宅とを結ぶ中間施設と位置づけられている。地方公共団体・医療法人などの非営利団体しか設立することができず、医師の配置が義務付けられている。
また、通所リハビリテーション・短期入所療養介護(いずれもみなし指定)も行っており、在宅生活を支えていく機能も有している。
◆答えの解説◆
1=○
老人性認知症疾患療養病棟は介護療養型医療施設の一種である。認知症のBPSD(認知症の行動・心理症状)で幻覚・妄想・徘徊などが生じると家族による介護は困難になるが、そのような場合に入院して介護・看護や機能訓練などのサービスを受けることができる。介護保険法施行前に精神病床であったものも含まれている。したがってこの記述は適切である。
2=○
その通りである。介護老人保健施設では、選択肢のような処置について、所定疾患施設療養費として、1か月に7日以内算定することができる。したがってこの記述は適切である。
3=×
介護老人保健施設は、在宅復帰を主に目指す施設ではあるが、終末期の利用者も増加してきている。ニーズは高まっており、看取りも行われる。したがってこの記述は適切ではない。
4=×
介護老人保健施設の運営に当たっては、地域住民やボランティア等との連携・協力その他の地域との交流に努めなければならないとされている。したがってこの記述は適切ではない。
5=○
介護老人保健施設は、正当な理由なく介護保健施設サービスの提供を拒んではならないとされている。要介護度や所得の多寡は、この場合の正当な理由には当たらない。したがってこの記述は適切である。
保健医療サービスの知識等(基礎):27年度-問題31
胃ろうについて、より適切なものはどれか。
3つ選べ。
1 経口摂取に移行しようとする場合には、多職種による経口移行計画を作成して行う。
2 半固形栄養剤の使用により、胃食道逆流や下痢を防止できる可能性がある。
3 カテーテルが抜けた場合でも、ろう孔から胃の内容物が漏れなければ、医師に報告する必要はない。
4 チューブ型カテーテルを固定する際には、体表から1~2cm程度の「あそび」を持たせるように外部ストッパーを調整する。
5 胃ろうを造設している場合は、原則として、入浴は禁止されている。
◆ポイント◆
この問題では、在宅での医療管理に関して、胃ろうについての知識が問われている。在宅ケアでは、在宅経管栄養法がしばしば行われる。経鼻胃管は、鼻から胃へ到達するカテーテルを通す方法である。
常時カテーテルが通っている状態であることから、違和感のため利用者自ら抜いてしまわないよう気を付ける必要がある。胃ろう・腸ろうは、皮膚に胃・腸への穴を開けて管を通し、栄養を注入する方法である。逆流を防ぐため、注入は上半身を30度程度上半身を起こして行う(ファーラー位またはセミファーラー位)。
◆答えの解説◆
1=○
その通りである。経口摂取への移行に際して、経口移行計画を作成する。したがってこの記述は適切である。なお、介護老人保健施設では、医師の指示に基づき、専門職が計画的に経口摂取への移行を支援することで経口移行加算が算定される。
2=○
液状栄養剤より半固形栄養剤の方が消化管の運動・作用が起こりやすいため、胃食道逆流・下痢を防ぐことができるとされる。したがってこの記述は適切である。
3=×
カテーテルが抜けた場合、ろう孔が閉鎖してしまう可能性があるため、すぐに医師に報告する必要がある。したがってこの記述は適切ではない。
4=○
チューブ型(バンパー型)カテーテルは、合併症を防ぐため、ストッパーと皮膚の間に1~2cmの「あそび」がある必要がある。したがってこの記述は適切である。また、カテーテルが回転することも確認しておく。
5=×
胃ろうの造設後、2~3週間程度後は入浴が可能である。したがってこの記述は適切ではない。なお、入浴には特別な配慮を要し、医療職と相談して行う必要がある。
保健医療サービスの知識等(基礎):27年度-問題32
次の記述について適切なものはどれか。
3つ選べ。
1 血圧低下とともに大量の黒色便を認めたが、鮮紅色ではなかったため、問題はないと判断した。
2 飲食物を大量に嘔吐したため、側臥位にして、口の中に残った吐物を取り除いた。
3 激しい下痢が続いたため、水分摂取を控えさせた。
4 一過性ではあったが、明らかな片麻痺を認めたため、医師に報告した。
5 転倒により下肢の骨折が疑われたため、下肢を動かさないようにした。
◆ポイント◆
この問題では、緊急時の対応についての様々な知識が問われている。選択肢に登場する黒色便とは、上部消化管での出血が胃酸による酸化で黒くなって起こるものである。これに対して、肛門側に近い大腸での出血や痔の場合には、鮮紅色の鮮血便が出る。一過性の麻痺は、一時的に脳内で血液が少ない状態、血液がない状態が発生して脳梗塞症状が出たものである(一過性脳虚血発作)。脳梗塞の前兆といわれており、注意する必要がある。
◆答えの解説◆
1=×
黒色便は、タール便ともいい、胃や十二指腸などの上部消化管での出血の可能性がある。血圧低下もみられるということで、速やかに医療職に連絡するなどの対応が求められる。したがってこの記述は適切ではない。
2=○
嘔吐の後は、吐物(吐いたもの)が気管に入って窒息をしてしまわないように、口の中に残った吐物を取り除く必要がある。この場合、誤嚥などを防ぐため側臥位で行う。したがってこの記述は適切である。
3=×
下痢が続いた場合、脱水症になるおそれがあるため、水分摂取を控えてはならない。したがってこの記述は適切ではない。
4=○
明らかな片麻痺の症状は、一過性であっても、脳梗塞の一過性脳虚血発作の可能性がある。速やかに医師へ報告する必要がある。したがってこの記述は適切である。
5=○
骨折が疑われる場合、副え木などで固定して安静を保つことで、痛みを和らげ、付近の血管・神経の損傷を防ぐことができる。したがってこの記述は適切である。
保健医療サービスの知識等(基礎):27年度-問題33
排泄について、より適切なものはどれか。
3つ選べ。
1 日常生活動作の低下による機能性失禁では、排泄に関する一連の日常生活動作の問題点を見極めることが重要である。
2 便失禁は、すべて医学的治療を要する。
3 ポータブルトイレやおむつについては、理学療法士等の多職種と連携し、日常生活動作に適合したものを選択する。
4 切迫性尿失禁には、膀胱訓練よりも骨盤底筋訓練が有効である。
5 排便コントロールには、排便間隔を把握し、食生活や身体活動等を含めた生活リズムを整えることが大切である。
◆ポイント◆
この問題では、排泄の介護についての知識が問われている。女性に多い腹圧性尿失禁は、出産・加齢で骨盤底筋群が緩んで起こるもので、お腹に力が入った時(咳やくしゃみ、重いものを持つ時など)に漏れるものである。
切迫性尿失禁は、膀胱の収縮で尿意切迫感(強い尿意)が生じて我慢ができなくなるもので、年齢とともに頻度が増えるとされる。高齢の男性に多い溢流性尿失禁は、前立腺肥大などで尿道が圧迫されて尿がうまく出にくく、だらだらと漏れる状態である。機能性尿失禁は、排尿のための行動をとることができずに漏れてしまうものである。手足の障害や認知症の場合に起こり、高齢になるにつれて頻度が上がる。
◆答えの解説◆
1=○
その通りである。機能性失禁の場合、トイレまでの動線や衣類など、生活環境・介護方法の工夫で改善することがある。したがってこの記述は適切である。
2=×
便失禁では、手術や薬物による医学的治療も行われるが、骨盤底筋群体操などを行うことで改善することもある。したがってこの記述は適切ではない。
3=○
ポータブルトイレ・おむつなどの福祉用具を選択する場合、理学療法士等の多職種に関わってもらうことで、利用者の身体動作能力や日常生活動作に適合したものを選択することができる。したがってこの記述は適切である。
4=×
切迫性尿失禁は、尿意が我慢できなくなって起こるものである。尿意を我慢して排尿間隔を延ばす膀胱訓練によって、膀胱に尿を貯められるようになり、改善につながる。したがってこの記述は適切ではない。なお、骨盤底筋訓練は腹圧性尿失禁に有効である。
5=○
その通りである。排便コントロールでは、規則的な排便をして便秘を予防するため、排便リズムを把握して生活リズムを整えていく。したがってこの記述は適切である。
保健医療サービスの知識等(基礎):27年度-問題34
終末期のケアについて、より適切なものはどれか。
3つ選べ。
1 呼吸困難や疼痛に対しては、投薬のほか、安楽な体位やマッサージなどで苦痛の緩和を図る。
2 食事については、楽しみや満足感よりも、摂収量や栄養バランスを優先する。
3 緩和ケアは、在宅では行われない。
4 要介護認定の前でも、保険者が必要であると認めた場合には、暫定ケアプランを作成して介護サービスを利用することができる。
5 臨死期において、肩や顎だけが動き、喘【あえ】いでいるように見えるのは、呼吸停止に至る一連の動きである。
◆ポイント◆
この問題では、終末期のケアについての知識が問われている。終末期にみられる呼吸の状態を整理しておく。死前喘鳴は、唾液を飲み込めず喉や上気道に溜まり、呼吸のたびに喉元がゴロゴロいう状態である。チェーンストークス呼吸は、小さな呼吸・無呼吸・大きな呼吸が周期的に現れる呼吸である。下顎【かがく】呼吸は、顎だけが動く呼吸であり、死期が迫っている状態で起きる。
◆答えの解説◆
1=○
終末期の苦痛に対して、投薬以外にも体位の工夫・マッサージなども効果がある。したがってこの記述は適切である。
2=×
終末期では、十分に食事を取れなくなることもあり、量・バランスよりも食べたいものを楽しみながら食べられるようにして満足感を得てもらうことが重要である。したがってこの記述は適切ではない。
3=×
在宅ケアの場合でも、訪問診療・訪問看護やその他の介護保険サービスなどで医療職・介護職がチームを組むことで緩和ケアを行うことができるようになっている。したがってこの記述は適切ではない。
4=○
その通りである。認定結果が出る前に暫定ケアプランを作成することができ、すぐにサービスを提供できる。保険給付の開始日は申請日まで遡ることができる。したがってこの記述は適切である。
5=○
臨死期には、肩や顎だけが動いて喘いでいるように見える(実際には苦しくない)状態から、顎だけが動く下顎呼吸となる。したがってこの記述は適切である。
保健医療サービスの知識等(基礎):27年度-問題35
次の記述について、より適切なものはどれか。
3つ選べ。
1 せん妄は、さまざまな全身疾患に伴う非特異的な症状として出現する。
2 夜間にせん妄が増悪する場合には、昼間に適度な刺激と散歩などの活動の機会をつくり、夜間に睡眠できるよう配慮する。
3 せん妄は感覚の遮断で改善するので、静かな環境を整備し、眼鏡や補聴器の装着を避ける。
4 アルコール依存症のケアでは、飲酒以外に楽しみのある生活ができるまでは、安易に断酒会には参加させない。
5 うつ症状には、降圧剤などの薬剤に起因するものもある。
◆ポイント◆
この問題では、各種の精神疾患に関する知識が問われている。せん妄は、一過性の可逆的な軽度の意識障害・意識変容である。一過性の認知機能低下、見当識障害や、不眠・興奮・幻覚・錯覚などがみられ、認知症の症状と似ている場合もある(認知症では意識障害はみられない)。夜間に現れることが多く「夜間せん妄」といわれる。また、アルコール依存症も高齢者の精神疾患の一つとして位置づけられる。高齢化に伴い、アルコールの代謝機能が低下し、低量でも酔いやすくなる。糖尿病・高血圧などの合併症もあることから、注意する必要がある。
◆答えの解説◆
1=○
その通りである。せん妄は、薬剤・脳疾患や全身疾患などのさまざまな要因で生じる意識障害である。比較的重篤な全身疾患があると生じやすい。したがってこの記述は適切である。
2=○
夜間に起こることの多いせん妄は、夜間の睡眠が浅くなると起こりやすいとされる。日中に活動して夜間に睡眠できるよう睡眠リズムを整えるとよい。したがってこの記述は適切である。
3=×
眼鏡や補聴器を外すと、周囲の状況が分かりにくくなり不安が増幅し、せん妄が現れやすくなることもある。したがってこの記述は適切ではない。なお、照明・騒音などがきっかけで起こることもあり、静かな環境を整備することは重要である。
4=×
アルコール依存症の治療では断酒が必須である。断酒会などの自助グループには初期の段階から参加しつつ、ほかの楽しみを見つけていくとよい。したがってこの記述は適切ではない。
5=○
うつ症状は、喪失体験などの環境要因で起こる場合もあるが、降圧剤などの薬剤が原因で起こることもある。したがってこの記述は適切である。
保健医療サービスの知識等(基礎):27年度-問題36
次の記述について、より適切なものはどれか。
3つ選べ。
1 パーキンソン病では、安静時の振戦やあらゆる動作が乏しくなる無動、仮面様顔貌【がんぼう】などもみられる。
2 慢性硬膜下血腫は、血腫除去術の治療を行っても、ほとんどもとの認知機能レベルには戻らない。
3 閉塞性動脈硬化症では、歩行時に下肢痛が出現し、立ち止まって休んでも痛みが軽減せず持続する。
4 脊髄損傷では、痛みや温度感覚が失われることもあるため、低温熱傷や擦過傷等に注意する。
5 帯状疱疹は、早期に治療を始めると、帯状疱疹後神経痛などの後遺症が少なくなる。
◆ポイント◆
この問題では、高齢者の介護などでよくみられる疾患についての知識が問われている。選択肢で問われたパーキンソン病は、4大運動症状についてしっかり把握しておく必要がある。①振戦は、体が勝手に震えてしまうことであり、じっとしていても震える安静時振戦が多く現れる。②筋固縮は、筋肉が緊張し、関節を動かしたとき抵抗があるものである。顔の表情が仮面のように変わらなくなる(仮面様顔貌)。③無動・寡動は、動きが鈍くなることである。急に動かなくなることもあるが、動きを止めることができなくなることもある。④姿勢・歩行障害は、上半身が前傾姿勢で小刻みに歩く特徴的な歩行となることである。転倒しやすくなる。
◆答えの解説◆
1=○
安静時振戦や無動はパーキンソン病の4大症状である。また、仮面様顔貌は4大症状の一つである筋固縮によって起きる。したがってこの記述は適切である。
2=×
慢性硬膜下血腫では、原因となっている血腫を除去することで認知機能が回復することが多い。このことから「治る認知症」といわれる。したがってこの記述は適切ではない。
3=×
閉塞性動脈硬化症では、歩行時に下肢痛が出て、立ち止まって休むと軽減するという症状が出る。これを間欠性跛行【はこう】という。したがってこの記述は適切ではない。
4=○
脊髄損傷では痛覚・温度感覚が失われることがあり、低温熱傷・擦過傷・褥瘡などに注意する必要がある。また、自律神経系の障害もあり、体温調節や排泄のコントロールの異常も現れることがある。したがってこの記述は適切である。
5=○
その通りである。早期の治療により帯状疱疹後神経痛などの後遺症を防ぐことができる。したがってこの記述は適切である。
保健医療サービスの知識等(基礎):27年度-問題37
難病について適切なものはどれか。
3つ選べ。
1 進行性核上性麻痺では、早期から眼球運動障害や認知機能の低下が認められる。
2 脊髄小脳変性症では、運動能力を維持するリハビリテーションや環境整備により、ADLを維持することが重要である。
3 潰瘍性大腸炎は、発症時に重症であっても、経過観察で完治する。
4 後縦靭帯【こうじゅうじんたい】骨化症では、首を強く後ろに反らすことにより症状が悪化する場合があるので、そのような動作は避ける。
5 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、症状は進行性で、数年で四肢麻痺、摂食障害、呼吸麻痺となり、痛みなどの知覚や記憶力も失う。
◆ポイント◆
この問題では、様々な難病についての知識が問われている。進行性核上性麻痺とは、脳の基底核を中心に脳の広範囲(脳幹・小脳・前頭葉)に進行性の変性をきたす。潰瘍性大腸炎は、大腸全体に潰瘍が生じ、下痢や腹痛がみられる。後縦靭帯骨化症は、後縦靭帯(頸~腰にかけて縦走している靭帯)が骨化(硬くなること)して脊髄の神経が圧迫される。頸部で起こることが多く、手足のしびれが生じる。筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、全身の骨格筋が徐々に萎縮して、四肢の筋力低下などが起こる、原因不明の難病である。眼球運動や知覚の障害はない。
◆答えの解説◆
1=○
その通りである。パーキンソン病によく似た症状があり、眼球運動障害や運動障害(転びやすい)、嚥下障害、認知機能の低下(抑うつ、無感情など)もみられる。したがってこの記述は適切である。
2=○
脊髄小脳変性症は、脊髄と小脳の変性により運動失調が生じることから、リハビリテーションなどによりADLを維持するためのケアが重要になってくる。したがってこの記述は適切である。
3=×
潰瘍性大腸炎は、大腸粘膜に炎症が生じる原因不明の難病であり、寛解と増悪を繰り返し、経過観察では完治しない。したがってこの記述は適切ではない。
4=○
その通りである。後縦靭帯の骨化で脊髄が圧迫されるもので、首を後ろに曲げる動作で症状が悪化することがある。したがってこの記述は適切である。なお、日常生活上では過度な生活運動制限はない。
5=×
筋萎縮性側索硬化症では、四肢麻痺・摂食障害・呼吸麻痺は生じるが、感覚障害は通常みられず、記憶力も失われない。したがってこの記述は適切ではない。
保健医療サービスの知識等(基礎):27年度-問題38
次の記述について適切なものはどれか。
3つ選べ。
1 喀痰の吸引に必要な吸引器は、介護保険により給付される。
2 膀胱留置カテーテルを留置している場合には、蓄尿バッグは、膀胱より低い位置に置く。
3 人工呼吸療法には、気管切開により行う場合や、口や鼻からマスクにより行う場合などがある。
4 インスリンの自己注射を行っている場合には、低血糖による意識レベルの変化に注意する。
5 人工透析を行っている場合には、シャント側で血圧測定を行う。
◆ポイント◆
この問題では、在宅での医療管理についての知識が問われている。膀胱留置カテーテル(バルーンカテーテル)とは、尿道口から膀胱内に挿入・留置する管で、持続的に尿を排出させることができる。清潔にして感染症を予防することが重要となる。シャントとは、血液透析の際に十分な血液量が確保できるよう、動脈と静脈をつなぎ合わせた血管のことである。チューブで体外でつなぐ外シャントもあるが、現在はほとんどが内シャントである。また、インスリンは、栄養分であるブドウ糖を組織内に取り込んで、エネルギーとして利用できるようにする働きがある。インスリンの働きが悪くなり血糖値が高くなるのが糖尿病である。
◆答えの解説◆
1=×
吸引器は医療機器とされ、介護保険の福祉用具給付品目には含まれていない。したがってこの記述は適切ではない。なお、障害者総合支援法に基づく日常生活用具給付等事業の品目には含まれている。
2=○
その通りである。尿の逆流を防ぐため、蓄尿バッグは膀胱より低い位置に置く。したがってこの記述は適切である。
3=○
自発呼吸が障害されている場合には、気管切開により人工呼吸療法を行う。そうでない場合、口や鼻マスクを用いた非侵襲的陽圧換気法が行われる。したがってこの記述は適切である。
4=○
糖尿病のインスリン療法では、食事・運動量の変化や薬の効きすぎで血糖値が下がりすぎる場合がある。したがってこの記述は適切である。
5=×
人工透析用のシャントは、圧迫や衝撃を避ける必要がある。血圧はシャントとは逆側の腕で測定する。したがってこの記述は適切ではない。
保健医療サービスの知識等(基礎):27年度-問題39
感染予防について、より適切なものはどれか。
3つ選べ。
1 手洗いでは、指先、指の間、親指、手首を洗い忘れないようにすることが基本となる。
2 手指消毒の方法としては、流水、石けん、アルコール製剤等によるものがある。
3 あらゆる人の血液、体液、分泌物、排泄物、創傷のある皮膚、粘膜には感染性があると考えて取り扱うのが、標準予防策の基本である。
4 ノロウイルス感染者の嘔吐物の処理の際は、汚染した場所をアルコールで消毒すればよい。
5 手袋の使用後は、手指の消毒の必要はない。
◆ポイント◆
この問題では、感染予防についての様々な知識が問われている。標準予防策(スタンダード・プリコーション)とは、介護職だけでなく医療職から利用者まですべての人に適用される感染予防の対策である。次の各点がポイントとなる。手指衛生では、「1ケア1手洗い」を徹底する。手指は、流水・石けん・アルコール消毒を行う。手袋・マスク・ゴーグル・エプロン・ガウンなどの個人防護具は、適切に使用してケアを行う。手袋は使用後破棄し、また使い回しは絶対にしない。その他、自らが感染源にならないための咳エチケット(マスク着用など)も重要である。
◆答えの解説◆
1=○
その通りである。手洗いでは、汚れが残りやすい爪や指の間、親指のほか、手首まで洗うことが重要である。したがってこの記述は適切である。
2=○
手指には多くの菌が存在することから、感染への対策として、流水と石けんでの手洗いの後、アルコールを含む消毒剤で消毒するのが有効である。したがってこの記述は適切である。
3=○
その通りである。感染源や感染経路には様々なものがあり、血液・分泌物・排泄物などはすべて感染の危険があると考えて取り扱うのが標準予防策の考え方である。したがってこの記述は適切である。
4=×
アルコールではノロウイルスは死滅させることはできない。汚染した場所の処理には次亜塩素酸ナトリウムを用いる。したがってこの記述は適切ではない。
5=×
すき間やピンホールなどから細菌等の侵入の可能性があるため、手袋を着用していても手洗いや消毒は行う必要がある。したがってこの記述は適切ではない。
保健医療サービスの知識等(基礎):27年度-問題40
短期入所療養介護について正しいものはどれか。
2つ選べ。
1 療養病床を有する診療所では、提供できない。
2 入所が4日以上になる場合は、居宅サービス計画に沿って短期入所療養介護計画を作成しなければならない。
3 利用者には、検査、投薬、注射、処置等の診療を行ってはならない。
4 居宅サービス計画にない場合でも、緊急時の利用は可能である。
5 あらかじめ、短期入所用のベッドを確保しておかなければならない。
(注)選択肢2、3及び5は、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)の定める内容による。
◆ポイント◆
この問題では、短期入所療養介護の制度についての理解が問われている。短期入所療養介護とは、病院・介護老人保健施設等における短期入所サービス(ショートステイ)のことであり、「介護、医学的管理のもとにおける介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話」が行われる。相当期間(おおむね4日以上)継続利用する利用者については短期入所療養介護計画の作成する必要がある。計画書は利用者に交付される。
診療は、利用者の病状・心身の状況・病状・日常生活・環境などの把握に努め、利用者・家族に対して適切な指導を行うとされる。また、検査・投薬・注射・処置などは利用者の病状に照らして妥当適切に行う。
なお、特殊な療法・新しい療法は厚生労働省が定めるもの以外は行ってはならず、また厚生労働大臣が定める医薬品しか施用・処方することができない。
◆答えの解説◆
1=×
短期入所療養介護を提供できるのは、介護老人保健施設、療養病床を有する病院・診療所、その他の診療所である。療養病床を有する診療所も提供することができる。したがってこの記述は正しくない。なお、2018(平成30)年に廃止される予定の介護療養型医療施設でも提供することができる。
2=○
おおむね4日以上にわたり継続利用する場合、短期入所療養介護計画を作成してサービス提供を行う必要がある。したがってこの記述は正しい。
3=×
短期入所療養介護において、検査・投薬・注射・処置等は、利用者の病状に照らして妥当適切に行うこととされる。したがってこの記述は正しくない。
4=○
居宅サービス計画に位置付けられている場合はそれに沿ったサービス提供を行うが、緊急時には、居宅サービス計画にない場合でも利用が可能とされる。したがってこの記述は正しい。
5=×
短期入所療養介護について、あらかじめベッドを確保しておくという規定はない。したがってこの記述は正しくない。
保健医療サービスの知識等(総合):27年度-問題41
バイタルサインについて、より適切なものはどれか。
3つ選べ。
1 低体温は、環境要因に加えて、低栄養や甲状腺機能低下症、薬剤による体温調節機能不全で起きる。
2 悪性症候群は、パーキンソン病薬の内服を開始したときに出現する。
3 頻呼吸は、発熱や心不全、呼吸器疾患でみられ、徐呼吸は、糖尿病性ケトアシドーシスや脳卒中による昏睡でみられる。
4 毎分50未満の脈拍は高齢者ではよくみられるため、医療職に報告する必要はない。
5 急に立ち上がったときに、ふらつきやめまいがみられる場合には、起立性低血圧を考える。
◆ポイント◆
この問題では、バイタルサインについての様々な理解が問われている。甲状腺機能低下症とは、甲状腺のホルモン分泌が低下して、強い倦怠感・発汗減少・無力感などの症状が現れる。橋本病はこの一種である。
悪性症候群は、抗精神病薬の副作用でも重篤なものであり、発汗・高熱・頻脈・手足のふるえなどが急激に起こる。抗精神病薬の投与中・増量時やパーキンソン病薬の急激な中止・減量で起こることがある。
糖尿病性ケトアシドーシスとは、インスリンの絶対的欠乏によりエネルギー源としてブドウ糖ではなく脂肪・タンパク質が使われるようになり、ケトン体が蓄積することで起きる状態のことである。1型糖尿病に多く、脱水・全身倦怠感や意識障害などが生じる。
◆答えの解説◆
1=○
低体温は、環境要因のほか、低栄養・甲状腺機能低下症・薬剤などにより体温調節機能が低下して起きる。したがってこの記述は適切である。
2=×
抗精神病薬の副作用である悪性症候群は、パーキンソン病薬を中止したり急に減少したりしたときに生じる。したがってこの記述は適切ではない。
3=○
その通りである。25回/分以上の頻呼吸は発熱・心不全や過換気症候群などの呼吸器疾患などで生じる。また、9回/分以下の徐呼吸は尿毒症や、糖尿病性ケトアシドーシス・脳卒中などによる昏睡で起きることがある。したがってこの記述は適切である。
4=×
脈拍が60回/分未満になると徐脈であり、失神・めまいなどを起こすことがある。原因を知るため医療職に報告する必要がある。したがってこの記述は適切ではない。
5=○
急に起き上がったり立ち上がったりしたときに血圧が過度に低下することで、めまい・ふらつきを起こすのが起立性低血圧である。廃用症候群の症状の1つである。したがってこの記述は適切である。
保健医療サービスの知識等(総合):27年度-問題42
訪問看護について正しいものはどれか。
2つ選べ。
1 訪問看護ステーションは、24時間連絡体制が義務付けられている。
2 認知症対応型グループホーム入居者は、訪問看護を利用できる。
3 訪問看護指示書のとおり訪問看護を提供している場合には、訪問看護報告書を主治医に定期的に提出する必要はない。
4 急性増悪時に主治医が特別訪問看護指示書を交付した場合には、訪問看護はその指示の日から2週間に限って介護保険から給付される。
5 利用者の意向の反映の機会を保障するため、看護師等は、訪問看護計画書の内容を利用者に説明し、同意を得て、交付する。
(注)選択肢1、3及び5は、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)の定める内容による。
◆ポイント◆
この問題では、訪問看護の制度に関する理解が問われている。訪問看護とは、病状が安定期にある居宅の要介護者に対し、看護師・保健師・准看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などが行う療養上の世話や必要な診療の補助のサービスである。以下のサービスを受けている間は訪問看護を受けることはできない。
短期入所生活介護、認知症対応型共同生活介護、短期入所療養介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、看護小規模多機能型居宅介護。
◆答えの解説◆
1=×
訪問看護ステーションでは、24時間連絡体制をとることは義務ではない。したがってこの記述は正しくない。なお、24時間連絡体制をとっていれば、緊急時訪問看護加算の算定が可能となる。
2=○
認知症対応型共同生活介護では、医療保険による訪問看護を利用することができる。したがってこの記述は正しい。
3=×
訪問看護事業者は、訪問看護計画書・訪問看護報告書を主治医に提出し、サービス提供に当たって主治医と密接な連携を図らなければならない。したがってこの記述は正しくない。
4=×
急性増悪などにより特別訪問看護指示書が交付された場合、指示の日から2週間に限って、介護保険ではなく医療保険による訪問看護を受けることができる。したがってこの記述は正しくない。
5=○
訪問看護の看護師等は、訪問看護計画書の作成に当たっては、主要事項について利用者・家族に説明し、同意を得なければならない。また、計画書は利用者に交付する必要がある。したがってこの記述は正しい。
保健医療サービスの知識等(総合):27年度-問題43
認知症について、より適切なものはどれか。
3つ選べ。
1 パーソン・センタード・ケア(PCC)は、介護者の効率を優先し、薬物療法等の医療を中心とした認知症のケアである。
2 初期では基本的ADLは保たれるが、中期には基本的ADLに支援が必要になるなど、認知症の進行過程により症状やケアの方法が異なる。
3 BPSD(認知症の行動・心理症状)は、脳の病変により症状が生じるため、個人因子や環境因子の影響は受けない。
4 アルツハイマー型認知症の初期症状としては、近時記憶の障害が著しい。
5 認知症初期集中支援チームは、認知症が疑われる者やその家族を複数の専門職が訪問し、アセスメント、家族支援などの初期の支援を包括的、集中的に行う。
◆ポイント◆
この問題では、認知症についての様々な知識が問われている。認知症のBPSD(行動・心理症状)とは、周辺症状ともいい、脳の障害に直接起因する中核症状とは異なり、適切なケアや医療で多くは改善するものである。
認知症利用者のケアにおける根本の考え方になるのが、「パーソン・センタード・ケア」であり、利用者の個性などを尊重してその人を中心とした最善のケアを目指すものである。これを実践するための方法として考案されたのが「認知症ケアマッピング」(DCM)であり、利用者の行動を一定時間観察し、どういう場面でどういう行動・状態にあるかを記録しておき、ケアの改善に役立てる。
◆答えの解説◆
1=×
パーソン・センタード・ケア(PCC)とは、「その人らしさ」をケアの中心として、認知症利用者を一人の人として尊重し、その人の立場や意向に沿ってケアを行うという認知症ケアの考え方である。したがってこの記述は適切ではない。
2=○
その通りである。一般的にはADLは徐々に低下していくが、進行過程のほか個人によっても症状およびその進行は異なるため、個人に応じたケアが必要になる。したがってこの記述は適切である。
3=×
認知症のBPSD(認知症の行動・心理症状)は、脳の病変による症状ではないため、国際生活機能分類(ICF)でいう個人因子・環境因子の影響を大きく受けるとされる。したがってこの記述は適切ではない。
4=○
アルツハイマー型認知症の初期症状としては、長期記憶(遠隔記憶)の障害より短期記憶(近時記憶)の障害の方が著しい。したがってこの記述は適切である。
5=○
認知症初期集中支援チームは、2014(平成26)年制度改正で地域支援事業に組み込まれた「認知症施策推進事業」で行われ、複数の専門職が訪問して家族の支援も含めた初期の支援を行う。したがってこの記述は適切である。
保健医療サービスの知識等(総合):27年度-問題44
リハビリテーションについて適切なものはどれか。
3つ選べ。
1 リハビリテーションは、その果たす機能と時期から、予防的リハビリテーション、治療的リハビリテーション及び維持的リハビリテーションに分けられる。
2 がんの終末期にある者は、治療の効果が期待できないため、リハビリテーションの対象とはならない。
3 訪問リハビリテーションとは、病院、診療所又は介護老人保健施設から理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士が訪問するサービスをいう。
4 変形性膝関節症の発症リスクは、減量をしたり、大腿四頭筋等の筋力を鍛えたりしても、低下しない。
5 左片麻痺でみられる半側空間失認に対しては、失認空間に注意を向けるリハビリテーションを行う。
(注)選択肢3は、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)の定める内容による。
◆ポイント◆
この問題では、リハビリテーションについての様々な知識が問われている。リハビリテーションに関わる専門職についてまとめておく。理学療法士(PT)は、身体障害による基本的動作能力の回復を図るため、治療体操・電気刺激・マッサージ等による療法(理学療法)を行う。補装具・福祉機器の活用や介護指導なども行う。
作業療法士(OT)は、身体・精神障害者の応用的動作能力・社会的適応能力の回復を図るため、手芸・工作その他の作業による作業療法を行う。言語聴覚士(ST)は、言語・聴覚に障害のある者について言語訓練などを行う。摂食・嚥下障害などについての指導も行う。
◆答えの解説◆
1=○
その通りである。リハビリテーションは、機能・時期によって、予防的リハビリテーション・治療的(急性期・回復期)リハビリテーション・維持的(維持期)リハビリテーションに区分できる。したがってこの記述は適切である。
2=×
がんの終末期にある者であっても、ADLを維持できればその人らしい生活を継続できることになるため、リハビリテーションの対象となる。したがってこの記述は適切ではない。
3=○
訪問リハビリテーションとは、医師が必要と認めた居宅要介護者を対象に、病院・診療所・介護老人保健施設などから理学療法士などの専門職が訪問して行うリハビリテーションの居宅サービスである。したがってこの記述は適切である。
4=×
変形性膝関節症は、肥満や筋力低下などで膝関節への負担が増大することが要因のため、減量や大腿四頭筋等の筋力を鍛えることで発症リスクは低下する。したがってこの記述は適切ではない。
5=○
その通りである。無視側である左側へ注意を向けることができるようにするリハビリテーションで、空間認知の正常化につながるとされている。したがってこの記述は適切である。
保健医療サービスの知識等(総合):27年度-問題45
居宅療養管理指導について正しいものはどれか。
3つ選べ。
1 主治医は、サービス担当者会議への参加が難しい場合は、原則として、文書等により介護支援専門員に必要な情報提供を行う。
2 サービス担当者会議は、居宅療養管理指導を行う医師又は歯科医師が利用者宅に訪問するときに、開催することが可能である、
3 薬剤師が行う居宅療養管理指導は、薬局の薬剤師に限定されている。
4 居宅療養管理指導は、区分支給限度基準額の対象にならない。
5 定期的に通院や訪問診療を受けている場合でも、訪問看護師が療養上の相談及び支援を行った場合には、居宅療養管理指導費を算定することができる。
(注)選択肢1及び2は、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第37号)の定める内容による。
◆ポイント◆
この問題では、居宅療養管理指導の制度についての知識が問われている。薬剤師が行う居宅療養管理指導では、医師・歯科医師の指示を受けて指導を行う。薬局の薬剤師については、薬学的管理指導計画を作成して行う。
指導の内容については、診療記録を作成して医師・歯科医師に報告するとともに、ケアプラン作成などのために必要な情報を介護支援専門員に提供する。なお、疼痛緩和のために居宅において麻薬を使用する利用者については、週2回、1か月8回を限度として麻薬管理指導加算を算定することができる。
◆答えの解説◆
1=○
居宅療養管理指導の主治医は、サービス担当者会議への参加が困難な場合、居宅サービス事業者等に対して情報提供・助言の内容を記載した文書を交付する。したがってこの記述は正しい。
2=○
サービス担当者会議は、訪問診療などで利用者の居宅を訪問中に開催することもできる。したがってこの記述は正しい。
3=×
薬剤師が行う居宅療養管理指導(薬剤管理指導)は、病院の薬剤師でも行うことができる。したがってこの記述は正しくない。
4=○
居宅療養管理指導は、介護給付の区分支給限度基準額には含まれない。したがってこの記述は正しい。
5=×
定期的に通院や訪問診療を受けている場合、また訪問看護サービスを受けている間は、看護職員による居宅療養管理指導の対象にはならず、指導費の算定は不可である。したがってこの記述は正しくない。